パランティアの天才的な”営業”手法FDEを徹底解説。外資系コンサルの客先常駐SEとはどこが違うのか?(本体レポート)

クライアントの組織をリプラットフォームするパランティアのFDE(Forward Deployed Engineer)つまり「技術×ビジネス」ハイブリッド人材の詳細

営業なき超成長:前線に立ち顧客のP/Lを動かすパランティアの衝撃

現代のエンタープライズITおよび人工知能(AI)の実装プロセスにおいて、一つの奇妙なパラドックスが存在する。多くの企業が「AIによるビジネス変革」に巨額の資金を投じているにもかかわらず、生成AIの試験導入やパイロットプロジェクトの約95%が、現場のオペレーションや利益計算書(P/L)に実質的な好影響を与えることなく頓挫しているという現実である 1。この実装プロセスの「ラストマイル」における機能不全を打破し、驚異的な高成長と高収益を同時に実現しているのが、米国パランティア・テクノロジーズ(以下、パランティア)である 2

同社の際立った強さは、企業の健全性と成長力を示す「Rule of 40(売上高成長率と営業利益率の合計値)」に明確に表れている 2パランティアは、2025年第4四半期に127%(売上成長率70%、調整後営業利益率57%)、さらに2026年第1四半期には145%(売上成長率85%、調整後営業利益率60%)という、通常のSaaS企業の理論的限界値を遥かに凌駕する数値を記録した 2

この爆発的な経済性の背景にあるのは、豪華な会食や抽象的なスライドで契約を勝ち取る伝統的な営業部隊ではない 4。パランティアにはそうした非生産的な要素がほとんど存在せず、代わりに顧客の最前線に「FDE(Forward Deployed Engineer:前線配備型エンジニア)」と呼ばれる超高スキルな技術者を直接送り込むという、徹底してプロダクトと価値に主導された市場投入(Go-To-Market)戦略を採用している 3

「販売員を増やすのではない。価値そのものに語らせるのだ」という最高経営責任者(CEO)アレックス・カープの哲学は、従来のエンタープライズ営業の常識を根底から揺るがしている 4技術を理解していない数千人もの営業担当者が市場を徘徊することは、むしろエンタープライズ領域における信頼性を損なうというのが同社の思想である 4。パランティアは、豪華な商談プロセスを排し、顧客の現場に「配備(Deploy)」された技術者が、混乱を極める実際のシステムやデータと格闘しながら、直接的にビジネスインパクトを稼働ソフトウェアとして実証していくアプローチを貫く 3。FDEは、AIという抽象概念を、企業のオペレーションを駆動する「実利」へと即座に変換するための最も強力な装置である 3

FDEのスキルマインドセット:「トップクラスのコード」+「CxOクラスのビジネス理解」

パランティアの組織においてFDE(社内で「Delta」と呼ばれる職種 7)として機能するためには、単に指示されたアルゴリズムを記述する能力、あるいは単に抽象的な戦略スライドを描く能力だけでは全く足りない。求められるのは、「トップクラスのコード実装力」と「CxOクラスのビジネス理解力」を完全に融合させた「T字型(あるいはフルスタック型)の技術的アスリート」としての資質である 1

パランティアでは、プロダクト開発と事業展開を高度に機能させるため、役割を主に3つの階層に定義している 7。第一に、コアプロダクト(Foundry、Gotham、AIP等)の基盤や共通機能を設計・開発する「Devs(コア開発者)」 7。第二に、現場で自社製品を個別の顧客環境に最適化してデプロイし、動作するシステムとして実証する「Deltas(FDE)」 7。そして第三に、顧客の組織的な経営課題や業務フローを構造化し、システムがもたらすべき価値を設計する「Echos(Deployment Strategist:DS)」である 7

Devsが「一つの共通機能で多くの顧客を救う(One capability, many customers)」ことを志向するのに対し、FDEであるDeltasは「一社の顧客に対してあらゆる機能を駆使して価値を出す(One customer, many capabilities)」ことを課せられている 8この極めて要求水準の高い役割を果たすために求められる技術的・ビジネス的要件は多岐にわたる 11

領域具体的な要件・コンピテンシー業務上の役割と機能
高度なデータ工学3年以上のデータエンジニアリング実務、ETL/ELTパイプライン構築、Spark、dbt、Airflow等による大規模データ統合スキル 11顧客のレガシーシステムから乱雑に散らばる異種データを取り込み、クレンジングして統合データ基盤を構築する 5
先端AI・MLOps大規模言語モデル(LLM)を用いたアプリケーション構築、プロンプトエンジニアリング、モデルデプロイ、LLMOps/MLOpsの知識 11AIP等のプラットフォーム上で、業務プロセスに応じた自律的なAIエージェントや推論フローを実装・評価する 4
技術的分解能技術的デコンポジション(Technical Decomposition)スキル、複雑な課題の因数分解能力 8経営陣の「サプライチェーンを最適化したい」といったマクロな要望を、具体的なデータモデルやコードの要件に分解する 8
ハイ・エージェンシーHigh Agency(高い主体性と突破力)、不確実性への耐性、組織心理学・政治的摩擦の解決力 6部署間の対立、厳格なセキュリティ規制、官僚主義的プロセスによる停滞を、現場の信頼を獲得しながら突破する 6
即時適応能力未経験のドメインや最新技術に対する超高速なキャッチアップ能力、自律的な問題解決力 8専門外の分野(サイバーセキュリティ、医療、防衛など)であっても、短期間で業務知識を吸収し、その場でプラグインや修正を実装する 8

FDEが直面する現場は、本社のテスト環境のように制御されたものではなく、不完全なデータ、不安定な接続、そして変化し続ける要求に満ちている 5。この過酷な状況下において、仕様書が提示されるのを待つ姿勢では即座に脱落する 3。FDEには「顧客の業務上の納期」に合わせた超高速な意思決定と、プラットフォーム上の問題を自ら発見してデバッグする圧倒的な自律性が付与されている 8

比較分析:従来の「外資系ITコンサル・常駐SE」との違い

既存の日本企業における職能定義の観点から、FDEはしばしば「客先常駐SE(SES)」や「外資系ITコンサルタント」の類似概念として誤解されることがある 3しかし、その本質的な役割、目的、経済的インセンティブ、そして製品開発組織との関係性は、従来のそれらとは根本的に、かつ概念的に決別している 3

最大の相違点は、パランティアの提供するソフトウェア(FoundryやAIP等)を単なる部分的な「ITツール」として納品するのではなく、企業の意思決定と現場実行を完全に同期させるための「OS(オペレーティングシステム)」として顧客の組織に深く埋め込むための「触媒」としての役割にある 5

以下は、従来の職種とFDEの構造的な差異を多角的に比較した表である。

比較項目従来の客先常駐SE(SES)従来のITコンサルタントパランティアのFDE(Delta)
本質的なミッション指示された仕様書に基づくシステムの開発・実装、または運用保守 3経営・IT戦略の策定、業務プロセスの可視化、改善提言と資料作成 3顧客の現実データを統合し、実際に動作するシステムによるP/L改善の直接的実証 3
主な成果物人月工数、および仕様書通りに動作する個別のコード 3プレゼンテーションスライド、要件定義書、プロジェクト完了報告書 3稼働するアプリケーション、オントロジー化された統合データ基盤 2
製品開発(HQ)との連携下流工程。自社製品のフィードバックループは存在せず、スクラッチ開発に終始する 3契約に基づくアドバイザリーであり、IT製品の開発ロードマップには介入しない 5プロダクト開発の上流。現場で得た共通課題を抽象化し、製品コアへ直接バックポートする 5
主たる契約と報酬構造人月単位(準委任・派遣契約)。期間が延び、要員が増えるほど売上が増加する 16プロジェクト単位の一時金。最終的なシステムの運用定着や成果に対する直接責任は負わない 16継続前提のサブスクリプション。顧客が実質的な価値を感じなくなった瞬間に解約されるリスクを伴う 16
現場での行動マインド受動的・従属的。発注元の指示を待ち、定められたスコープ外の作業は拒絶する 11「伴走者」としての立場を維持し、実行責任や泥臭い政治的調整の責任は顧客側に委ねる 16「一歩先を走って引っ張る」。主体的(High Agency)に組織の摩擦を打破し、主導者として振る舞う 6

この比較において最も重要な論点は、FDEが「製品ロードマップの上流」に位置しているという事実である 5従来のコンサルタントは「契約の下流」として、あらかじめ定義された契約スコープの範囲内で個別のソリューションを構築・納品する 5その結果生み出されるのは、再利用性のない、その場限りのスパゲッティコードやカスタムビルドシステムである 5

対照的に、パランティアのFDEは、顧客ごとの個別最適な対応を徹底的に行いながらも、その泥臭い現場作業を通じて「異なる業界でも共通して発生している構造的な課題」を発見する任務を帯びている 5例えば、「複数のサイロ化されたデータソースからのエンティティ解決」「イベントデータの時系列推論」「データ系列に基づくアクセス権限管理」「AIの監査可能性」といった課題である 5。FDEはこれらをその場限りのカスタムロジックとして放置せず、プラットフォーム内で再利用可能な「プリミティブ(基本要素)」として抽象化し、コアの製品開発チーム(Devs)に送り戻してプラットフォームの標準機能に昇華させる 5

このように、FDEは一時的な労働力の補填として顧客を甘やかす「カスタマーベビーシッター」ではない 1。彼らは顧客の不完全な現場という現実の摩擦(Discomfort)を利用して、パランティア全体のプロダクトを進化させるための「最大の製品発見・機能形成メカニズム」なのである 1

また、マインドセットにおける「伴走」と「牽引」の違いも決定的である。従来のITプロジェクトでは、顧客に「寄り添う」ことが良しとされてきた。しかし、変革の本質は耳の痛い真実を突きつけることにある。AIを真に導入して業務を効率化することは、往々にして既存の部署の統廃合や不要な中間プロセスの撤廃(ジョブカットなど)を伴い、現場の強硬な抵抗に直面する 6FDEは、顧客の感情に無批判に伴走するのではなく、強固な技術的信頼関係(Trust)を背に、顧客の一歩先を走ってその手を強引に引っ張り上げる戦術将校として振る舞う 3。この高い主体性と変革の覚悟こそが、プロジェクトを死のPoCから救い出す最大の防波堤となる 2

なぜFDEは「最強の営業手法」と言えるのか?

IT業界における従来の常識では、製品を売るのは「優れた営業トークや顧客とのリレーション(人間関係)」であり、技術者は売れた後の導入をサポートする存在に過ぎなかった。しかしパランティアは、FDEという実装組織そのものを、顧客獲得コスト(CAC)を極限まで引き下げる「最強の営業エンジン」に仕立て上げることに成功している 14その中核となるメカニズムは、以下の3つの要素から構成される。

「AIPブートキャンプ」という破壊的体験設計

パランティアの市場開拓を爆発的に加速させたのが、2023年後半から世界中で本格始動した「AIPブートキャンプ」である 4これは、見込み顧客に対して長期にわたる製品説明や交渉を行う代わりに、顧客の「実際の機密データ」と「現実の難解な業務課題」を直接ワークショップに持ち込ませるものである 2

FDEは顧客のデータエンジニアや現場担当者と机を並べ、わずか1〜5日間という超短期間で、そのデータを用いて実際に稼働するAIワークフローアプリケーションをその場で作り上げて実証する 2見込み客は、数千万円から数億円の巨額投資を意思決定する「前」に、自社のリアルな問題がパランティアのシステム上で解決される瞬間(ROI)を自分の目で目撃することになる 14。この極めて説得力のある「 Show, don’t tell(語るな、見せよ)」のアプローチにより、従来のエンタープライズ製品であれば数ヶ月から数年を要したセールスサイクルが数日単位にまで劇的に圧縮される 17

「オントロジー」がもたらす圧倒的な技術的信頼

多くの企業が自社で進めるAIプロジェクトで頓挫するのは、LLMが自然言語を扱えても、社内のデータ構造や固有の業務コンテキスト(「どの部品がどの製品に使われ、どの航空機の運航スケジュールと紐付いているか」等)を一切理解していないためである 2。パランティアの技術的な核である「オントロジー(Ontology)」は、企業のバラバラに存在するERPやセンサーデータ、PDFのマニュアルなどの異種データを接続し、企業のリアルタイムな活動状況を完全に再現した「デジタルツイン」を構築する 2

オントロジーは、以下の要素を構造化することで、AIに正確な現実の文脈を学習させる 2

  • オブジェクト(Objects): 「航空機」「パイロット」「介護施設の入居者」などの具体的な経営資源 2
  • プロパティ(Properties): 「フライト残時間」「現在のバイタルサイン」などの動的パラメータ 2
  • リンク(Links): 「特定の航空機が、特定のパイロットと運航計画に紐付いている」という関係性 2
  • アクション(Actions): 「運航計画の変更」「センサーに基づく異常時アラートの発出」といった、現実の基幹システムへ直接データを書き戻す実行系インターフェース 2

FDEは顧客の現場に深く入り込み、このオントロジーを高速で設計・定義する 2。AIエージェントの安全な自律実行(Agentic Runtime)を可能にするセキュリティや監査ログのガバナンスも、このオントロジーによって厳格に制御される 2。汎用的で何の特徴もないクラウドベンダーの未整理なデータブロックとは異なり、パランティアは最初から「企業の意思決定を即座に自動化する、意見を持った(opinionated)強固なビルディングブロック」を提供する 4。これにより、価値創出までのスピードが10倍に跳ね上がるため、顧客は熱狂的なリピーターへと変貌していく 4

顧客の成功体験が生む「無償のピア・エフェクト」

製品価値に圧倒された既存の顧客は、自らパランティアの熱狂的なエバンジェリストとなる 4。同社が主催する「AIPCon」などのカンファレンスでは、ユナイテッド航空、BP、ゼネラルミルズといった世界的な企業のリーダーたちが自ら登壇し、自社で構築したFoundryやAIPのデプロイ実績と、それによってもたらされた多大なコスト削減・利益改善効果を、他の見込み顧客の前で熱っぽく実演・証明する 4

これによって、見込み顧客に対する最大の信用補完が、営業担当者の売り込みではなく「他社のCxOによる本音の証言」を通じて自律的に行われるクローズドループが完成する 4。FDEという現場の実装部隊が顧客に強烈な成功体験を植え付け、その結果として次の顧客が吸い寄せられるため、パランティアは「寄生的な営業経費」を極限まで削ぎ落としながら、高収益な成長を維持することができるのである 4

まとめ:日本企業が「FDE型人材」を育成・活用するための提言

日本の多くの大企業では、戦後一貫して「文系営業・理系SE」という硬直化した分業制が組織の基本構造として定着してきた 15。このモデルは、高度経済成長期のように「あらかじめ決まった大量の仕様を、均質に正しく処理する」局面では極めて有効であった。

しかし、技術革新のスピードが極限に達し、AIが毎日のように進化する現代においては、この分業制そのものが企業のイノベーションを阻害する最大のボトルネックと化している 15。文系営業は技術的なリアリティを持たないまま不可能な約束を顧客と交わし、理系SEは指示された「仕様書」の範囲外に潜む本質的な経営課題に目を向けることなく、納期とデバッグのストレスから守りの姿勢に終始する 3。その間を埋めるコンサルタントは、実行責任の伴わない美しい「動かない資料」を大量に作成し、システム開発が始まる頃にはプロジェクトの価値自体が霧散している 3

こうした日本企業の構造的な機能不全に対して、パランティアのFDEモデルは、極めて強力なオルタナティブ(代替案)を提示している 3。このモデルのエッセンスを取り入れ、真の「技術×ビジネス」のハイブリッド人材を社内に育成・活用するためには、以下の4つのステップからなる戦略的アプローチが必要である。

第一歩:AIの実装を「ツールの導入」から「ワークフローの再設計」へシフトさせる

AIの導入目的を「チャットボットで議事録を作成する」といった個別業務の効率化(ツールアプローチ)に留めていては、恒久的なビジネス価値は生まれない 1。真の価値は、AIが存在することを前提として、部署を跨いだ全体の仕事の流れをドラスティックに「再設計(Re-platforming)」すること(ワークフローインフラアプローチ)にある 1

すでに日本の先進事例として、SOMPOホールディングスはパランティアと合弁会社を立ち上げ、グループCDO楢﨑浩一の指揮下でFoundryを用いた「リアルデータプラットフォーム(RDP)」を構築している 18。彼らはSOMPOケアの現場において、これまでセンサー、呼吸モニター、脈拍センサーなどの個別のシステムに分散していた数百の異なるデータを一元化し、オントロジー化した 18。これにより、従来は一人のケアプランを作成するために複数システムを回って30分かかっていたデータ収集作業を「瞬時」に完了させるワークフロー変革を成し遂げた 18。これは「ツールの導入」ではなく、介護のあり方を「事後対応型(受動的)」から「予防型(積極的)」へとリプラットフォームした結果である 18

第二歩:「内製化」を急ぐ前に「購入と統合(Buy & Integrate)」へ切り替える

多くの日本企業は、独自仕様のITシステムをゼロからスクラッチで内製開発しようとして失敗を繰り返す 1。統計によれば、社内で完全に独自のAIツールを自社開発しようとした場合の成功率はわずか33%に留まるのに対し、優れた既存のプラットフォームを「購入し、現場に最適化して統合する(Buy & Integrate)」アプローチを採用した場合の成功率は67%に跳ね上がる 1

FDEの育成も同様である。何もない砂漠から独自のプログラムを組むスキルを教え込むのではなく、FoundryやAIPのような「高度に完成されたデータ・AI基盤(プレイグラウンド)」をあらかじめ導入し、その上で現場のデータをモデル化して実用アプリケーションを構成する「統合型エンジニア」として社内人材を訓練すべきである 1

第三歩:FDE型人材を「製品・プロダクト開発部門」に直結して配備する

社内のデジタル人材やIT部門の評価制度を、人月工数や「保守の安定性」に紐付けるのを即座にやめるべきである 1。FDEと同様に、彼らを経営・事業部門の直下に置くか、製品・プロダクトロードマップに直接コードを書き込める権限を持たせた形で「現場に配備」する 1

FDE型の少人数のエリートユニット(プロダクト開発者、データエクスパート、業務デザイナーからなるポッド)を特定の重要事業部門に3〜12ヶ月間深く埋め込み、そこで発見した現場の「不条理な業務フロー」や「乱雑なデータ接続問題」を、企業のコア共有プラットフォームの共通部品として抽象化させてHQ(IT本部)へ還流させるフィードバック機構を構築する 1このサイクルを回すことで、社内ITシステムは使えば使うほど現場にフィットし、無駄な個別開発コストが急激に削減される好循環に入る 5

第四歩:人間が担うべき「責任の分界(Human-in-the-loop)」をデザインする

AIエージェントの自律化(AI FDEなど)が進む今後の環境において、ハイブリッド人材が担うべき最も付加価値の高い業務は、AIの出力を鵜呑みにすることではなく、AIと人間の高度な役割分担を設計することである 1

優れた実践例として、米モルガン・スタンレーはOpenAIを用いたアシスタントを導入した際、ドキュメントの検索と下書き作成(一次作業)の効率を20%から80%へ劇的に向上させながらも、顧客への最終的な判断やコミュニケーションには必ず「人間(金融アドバイザー)」を介在させる設計(Human-in-the-loop)を維持した 1また、スウェーデンのフィンテック企業クラーナ(Klarna)は、AIによる第1次サポートの自動化によって年間約6,000万ドルのコストを削減しつつも、感情的で複雑、あるいはリスクの高い「残りの20%」の高度な相談には最初から人間の熟練エージェントを割り当てる2層構造を最適化した 1

日本企業におけるこれからのハイブリッド人材は、単にコードが書けるというだけでなく、こうした「どこまでをAIに自律実行させ(Agentic Runtime)、どの判断に人間の専門知識を留めるべきか」という業務デザイン、および安全設計を高度に議論できるアーキテクトでなければならない 1

日本市場への進出に際し、OpenAIが営業所を設立するだけでなく、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の同じ執務フロアに、銀行員と全く同等の利害関係者(ステークホルダー)として機能する専門技術者(FDE同等人材)を配備した動きは極めて象徴的である 3。彼らは下請けの外注ベンダーとして振る舞うのではなく、銀行の膨大な非構造化データを整理し、共に本番運用へと伴走する運命共同体として入ってきた 3

「仕様書通りに動くシステム」を納品して責任を終える時代は完全に過去のものとなった 3これからの日本企業に必要なのは、自らが「一歩先を走るFDE」となり、混沌とした現場に深く入り込んで、技術という名のメスで古びた組織のOSそのものを書き換えていく覚悟を持った、ハイ・エージェンシーな変革者たちである 3。FDEの思想を組織の血肉とすることこそが、PoCの死の谷を乗り越え、AI時代に真の価値を創出するための唯一にして決定的な解法である。

引用文献

  1. Understanding the Forward Deployed Engineering (FDE) Model, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www.futureventures.ca/insights/understanding-the-forward-deployed-engineering-model
  2. Palantirは何がすごい?FDEとAIP BootcampでAIを利益に変える …, 6月 3, 2026にアクセス、 https://arpable.com/management/corporate-strategy/palantir-ontology-fde-bootcamp/
  3. 年収6千万円超えの異色職種「FDE」とは…OpenAIもMUFGに …, 6月 3, 2026にアクセス、 https://biz-journal.jp/economy/post_393308.html
  4. Palantir’s software revolution: Forget sales people, let value do the talking, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www.constellationr.com/insights/news/palantirs-software-revolution-forget-sales-people-let-value-do-talking
  5. Understanding Palantir: Forward‑Deployed Engineers and the …, 6月 3, 2026にアクセス、 https://medium.com/@balajibal/understanding-palantir-forward-deployed-engineers-and-the-making-of-an-unusual-platform-company-494dc7812f24
  6. Rise of the Forward Deployed Engineer – Hacker News, 6月 3, 2026にアクセス、 https://news.ycombinator.com/item?id=47951082
  7. Careers – Palantir, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www.palantir.com/careers/
  8. Dev versus Delta: Demystifying engineering roles at Palantir | by …, 6月 3, 2026にアクセス、 https://blog.palantir.com/dev-versus-delta-demystifying-engineering-roles-at-palantir-ad44c2a6e87
  9. A Day in the Life of a Palantir Forward Deployed Software Engineer, 6月 3, 2026にアクセス、 https://blog.palantir.com/a-day-in-the-life-of-a-palantir-forward-deployed-software-engineer-45ef2de257b1
  10. AI時代における次世代SIer『Palantir(パランティア)』について …, 6月 3, 2026にアクセス、 https://note.com/ripla_business/n/n279abca69ef0
  11. Palantir Forward Deployed Engineer – Accenture, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www.accenture.com/us-en/careers/jobdetails?id=R00324743_en
  12. Forward Deployed Engineer – Palantir – – 329094 – Deloitte US, 6月 3, 2026にアクセス、 https://apply.deloitte.com/en_US/careers/JobDetail/Forward-Deployed-Engineer-Palantir/329094
  13. Palantir Forward Deployed Engineer Interview Guide – Datainterview.com, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www.datainterview.com/blog/palantir-forward-deployed-engineer-interview
  14. なぜパランティアはAI時代の「OS」と呼ばれるのか?驚異的成長の裏にある、経営判断を革新するデータ戦略 – ポッドキャスト制作・Webクリエイティブ・デジタル施策をトータルサポート | Submarine − 想いを, 6月 3, 2026にアクセス、 https://submarine-c.com/media-bigtech/palantir-ai-os-data-strategy/
  15. 文系でSEになるのはやめとけと言われる理由3選 – 侍エンジニア, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www.sejuku.net/blog/206665
  16. 「パランティアモデル」の本質は適正化された「コンサルの … – note, 6月 3, 2026にアクセス、 https://note.com/art_reflection/n/n48e278046266
  17. What is Sales and Marketing Strategy of Palantir Technologies Company? – Matrix BCG, 6月 3, 2026にアクセス、 https://matrixbcg.com/blogs/marketing-strategy/palantir
  18. Impact | SOMPO Japan – Palantir, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www.palantir.com/impact/sompo/japan/
  19. Sompo | Palantir, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www.palantir.com/jp/casestudies/sompo/
  20. 文系からエンジニアやSEはやめとけ!理由とIT業界について解説 – ユニゾンキャリア, 6月 3, 2026にアクセス、 https://unison-career.jp/engineer-media/article/it-engineer-knowledge/engineer/engineer-gossip/p5756/
  21. 価値創造サイクル 新たな価値創造ルート | SOMPOホールディングス, 6月 3, 2026にアクセス、 https://www2.sompo-hd.com/ir/data/disclosure/hd/online2022/cycle-new/
  22. 新規事業育てたSOMPOの成功要因とは 「オープンイノベーションの猛者」が、今なお肝に銘じる教訓 – TECHBLITZ, 6月 3, 2026にアクセス、 https://techblitz.com/event-report/njs-sompo-hd-at-partners/
さっつーのよい知らせ 第17話

【さっつーのよい知らせ】第17話・電話(アナログイラスト・漫画×癒し)

友達のコンパチ君の様子がおかしい…一体何が⁉︎

【あらすじ】

悪役コガネザメによる誹謗中傷にめげず、さっつーの良い所をSNSに投稿し続けたさっつーとサメ兄弟。その言葉は「さっつーのよい知らせ」としてサメ界に届き、住民達の態度も変わっていきました。 「たべものも、さっつーのポイントもあるし、ぼくたちこれで安心して暮らせるねっ!」と一同が喜んでいたその時、サメじろうの電話が鳴る。それは友人コンソメ・パチオからでしたが、彼の様子は明らかにおかしく……。

SNSを通じて変わり始めるサメ界の住民たちと、束の間の安心。そこに突きつけられる、友人コンパチ君の不穏な一本の電話。ほのぼのした癒しのリズムの中に潜む急展開をお見逃しなく!


イラスト・原作:ソラガスキ

AI駆動型ケーススタディ金融AI