前回は「9月2日まで2週間」として、2026年8月20日から9月2日までの液冷関連ニュースを整理しました。今回はその続編です。
前回から9月24日まで22日間空いたため、今回は無理に「2週間」と区切らず、9月3日から9月24日までの約3週間を対象にした臨時拡大版とします。
この3週間で、液冷をめぐる状況はかなり具体的になりました。
前回までは、「AIサーバーの発熱量が増えるため、空冷から液冷への移行が必要になる」という議論が中心でした。今回はその一段先です。
NVIDIAがAI Factory向けの電源・冷却設備を認定する「NVIDIA DSX Ready」を正式に開始し、2MWを超える大型CDUが実際に認定されました。さらにSupermicroは、NVIDIAの次世代Vera Rubin NVL72を、直接液冷設備と一体化して出荷し始めています。
つまり液冷は、将来必要になる特殊な冷却技術ではなく、次世代AI Factoryを構成する標準設備の一つになり始めています。
- Executive Summary
- 1.LITEONがDCXに約1.76億ドル投資。「電源+液冷」の再編が続く
- 2.日本ではフィックスターズなど3社が「水冷GPUコンテナDC」を商品化
- 3.Uptime Instituteが指摘した「マルチベンダー液冷」という新しい問題
- 4.Deltaは800VDC電源と3MW液冷を一体化
- 5.液冷がブラジルとメキシコにも広がる
- 6.NVIDIA DSX Readyは液冷市場の商流を変える可能性がある
- 7.Vertivの2.3MW CDUがNVIDIA DSX Ready第1号に
- 8.Schneider Electricが示した「液冷と水使用量」の関係
- 9.LGの2.6MW CDU。「ラック単位」から「複数ラック単位」へ
- 10.Schneiderの3.5MW WCDUが示した「空冷を全部捨てない」設計
- 11.SupermicroがNVIDIA Vera Rubin NVL72を液冷設備込みで出荷開始
- 前号から何が変わったのか
- 日本企業への影響
- 1.CDUメーカーは「冷却能力」だけでは差別化できなくなる
- 2.ポンプ、熱交換器、バルブ、QD、配管企業には市場が広がる
- 3.800VDCと液冷は別市場ではなくなる
- 4.日本では「既存施設+液冷」「コンテナ+液冷」が大きな市場になり得る
- 経営会議で確認しておきたい三つのこと
- 次の1カ月で確認したいポイント
- 結論
Executive Summary
今回、東証プライム企業の経営者が押さえておくべきポイントは五つです。
1.NVIDIAがCDUを「AI Factoryを構成する認定設備」にした
9月21日、NVIDIAは「NVIDIA DSX Ready」を発表しました。AI Factoryを構築する際に使う設備について、NVIDIA DSXの要件を満たす製品を認定する仕組みです。
最初の認定カテゴリーとして選ばれたのが、BESS(蓄電池システム)とCDU(Coolant Distribution Unit)でした。CDUではLG Electronics、LiquidStack、Vertivが初期プロバイダーに入っています。
ここが今回のニュースの中で最も重要です。
これまでCDUは、データセンターの「冷却設備」の一つでした。これからは、NVIDIAのAI Factoryを構成する設備として、GPU、ネットワーク、電源設備などとの整合性を考慮しながら選定される方向に進みます。
ただし、NVIDIAとVertivはいずれも、DSX Ready認定が個別データセンターの設計を保証するものではなく、サイトごとのエンジニアリングが引き続き必要であることを明記しています。
したがって経営上の意味は、NVIDIAの認定が「万能のお墨付き」になることではありません。
CDUメーカーや周辺部材メーカーにとって、NVIDIAのレファレンスデザインとの整合性が、顧客から選ばれるための重要な条件になっていく可能性が高いということです。
2.CDUは数百kW級から2~3.5MW級へ大型化している
9月21日、Vertivの2.3MW CDUがNVIDIA DSX Readyとなりました。Vertivによると、2.3MWモデルはDSX Readyとして最初に認定されたCDUです。Direct-to-ChipとRear Door Heat Exchangerの双方に対応します。
翌22日にはLG Electronicsが2.6MW CDUのDSX Ready認定を発表しました。LGはすでに600kWと1MW級CDUの認定も取得しています。LG自身も、需要が「個々のラックを冷却する構成」から「複数の高密度ラックをまとめて冷却するMW級CDU」へ移りつつあると説明しています。
さらに9月23日、Schneider ElectricはMotivairブランドから最大3.5MWのWCDUを発表しました。最大20台をグループ運転でき、30~40MW級データホールに対応する設計です。
NVIDIAのDSX設備設計資料では、キャビネットTDPはMGX Gen 1.1の198kWからVera Rubin NVL72の330kWまで拡大し、CDUについてN+1構成が示されています。
つまり、
「ラックが100kWを超えたから液冷が必要」という段階から、「300kW級ラックを何台もまとめて処理するため、CDUそのものをMW級設備として設計する」段階へ進んでいます。
この3週間の重要ニュース一覧
1.LITEONがDCXに約1.76億ドル投資。「電源+液冷」の再編が続く
9月3日/戦略投資
出典記事:LITEON Technology「LITEON Announces Strategic Investment in Liquid Cooling Technology Company DCX」(2026年9月3日)
LITEON公式リリースを読む
参考:DCX側公式発表
DCX and LITEON Announces Strategic Investment
台湾のLITEON Technologyは、ポーランドのDCX Liquid Cooling Systemsに約1億7600万ドルを投資し、取引完了後に約25%を保有すると発表しました。
DCXはCDU、FDU、コールドプレート、液浸冷却などを手掛けています。一方のLITEONは、AIサーバー向け電源、ラック電源、800VDC電源アーキテクチャなどを持っています。
つまり今回の投資は、単純な液冷メーカーへの財務投資ではありません。
800VDCの電源技術を持つ企業が、液冷技術を自社のAIデータセンター事業に組み込むための投資です。
前号では、SLBによるKelvionの大型買収を取り上げました。今回はLITEONです。
二つを並べると、液冷市場で起きている変化が見えます。
AIデータセンターでは、電源設備、CDU、熱交換器、冷却塔などを個別に最適化するのではなく、AIサーバーまで含めたシステムとして最適化する必要があります。そのため、電源メーカーやインフラ企業が液冷技術を自社内に取り込む動きが続いていると考えられます。
これは公開された取引内容から見た経営上の推論です。
2.日本ではフィックスターズなど3社が「水冷GPUコンテナDC」を商品化
9月8日/日本
出典記事:NTTPCコミュニケーションズ「機密データを自社環境で活用できるAI基盤『水冷GPUコンテナDC-PKG』を提供開始」(2026年9月8日)
NTTPC公式リリースを読む
NTTPCコミュニケーションズ、ゲットワークス、東証プライム上場のフィックスターズの3社が「水冷GPUコンテナDC-PKG」の提供を開始しました。
40フィートのコンテナ型データセンター、水冷対応NVIDIAアクセラレーテッド・コンピューティング・サーバー、CDU・チラー、統合監視、運用支援などを一つのパッケージとして提供します。顧客企業の敷地と電源設備を利用してオンプレミスAI基盤を構築でき、標準構成で納期は最短8カ月です。
想定用途には、機密データを扱う企業のAI基盤や、製造業で設計データ・生産ライン映像を使う外観検査、異常検知などが挙げられています。
また3社は、今後NVIDIA Vera Rubinプラットフォームへの対応も進める方針です。
海外では2MW、3MWという巨大なCDUが目立ちますが、日本では別の市場も立ち上がっています。
「巨大AIデータセンターを建設する」のではなく、「工場や企業の敷地に水冷GPUコンテナを置く」という市場です。
日本では製造業、研究開発、金融など、自社データを外部クラウドへ持ち出しにくい用途があります。
そうした需要に対して、GPUだけを販売するのではなく、電源、冷却、コンテナ、監視、運用まで一括提供するモデルが出てきたことは注目しておく必要があります。
3.Uptime Instituteが指摘した「マルチベンダー液冷」という新しい問題
9月14日/運用・標準化
出典記事:Uptime Institute Intelligence「IT-agnostic DLC systems: key considerations」(2026年9月14日)
Uptime Instituteの記事を読む
Uptime Instituteは、Direct Liquid Coolingについて興味深い論点を提示しました。
データセンターは一度建設すれば、その中で複数世代のIT機器が入れ替わります。しかもGPUやサーバーのメーカーは一社とは限りません。
そのため、メーカーごとに別々の液冷ループを構築するのではなく、異なるベンダーの液冷IT機器を単一の標準化された液冷インフラで運用できるようにすることが重要になると指摘しています。
これは今後、日本のデータセンター事業者にも重要になります。
液冷設備には、冷却液、水質、温度、圧力、流量、配管、QDコネクタ、マニホールド、漏液検知など、多くの要素があります。
サーバーを入れ替えるたびに設備側まで大改造するのでは、データセンターの運用コストが高くなります。
したがって次の競争は、単純な「冷却能力○kW」だけではありません。
異なるGPU、異なるサーバー、異なる世代を同じ設備で受け入れられるかどうかが重要になります。
液冷市場が広がれば広がるほど、「相互運用性」が商品価値になります。
4.Deltaは800VDC電源と3MW液冷を一体化
9月15日発表/Deltaサイト掲載9月17日
出典記事:Delta Electronics「Delta Bridges Energy and Compute for AI Factories Based on NVIDIA DSX」(2026年9月15日発表)
Delta公式リリースを読む
Delta ElectronicsはNVIDIA DSXをベースにしたAI Factory向けに、電源から液冷までを統合したインフラを発表しました。
800VDC電源とRow-to-Chip液冷を組み合わせ、2.4MWと3MWのLiquid-to-Liquid CDUを用意します。
800VDC電源では最大98%の変換効率、ボードレベルの800VDC DC-DCではピーク効率最大98.5%としています。いずれもDeltaが公表した製品性能値です。
さらに重要なのがプレハブ化です。
DeltaのPrefabricated AI Modular Data Center Solutionは、800VDC In-Row Powerと3MWの液冷能力をインフラブロックへ統合し、工場で組み立て・試験してから現地へ搬入する方式です。
ここには今後のAIデータセンターの方向性がかなり明確に表れています。
電源設備と冷却設備を別々に設計し、現地で組み合わせるのではなく、800VDC電源と液冷設備を一つのAIインフラとして工場で組み立てる方向です。
AIデータセンターの工期短縮が重要になれば、現地工事を減らして工場で完成度を上げるプレファブリケーションの価値は高まります。
日本の電機、重電、空調、ポンプ、熱交換器、配管、建設設備企業にとっても重要な変化です。
5.液冷がブラジルとメキシコにも広がる
9月17日/ODATA
出典記事:Aligned Data Centers/ODATA「ODATA Brings Next-Generation Cooling to Latin America with DeltaFlow Liquid Cooling Technology」(2026年9月17日)
Aligned Data Centers公式リリースを読む
Aligned Data Centers傘下のODATAは、ブラジルのSP04とメキシコのQR03に、液冷システム「DeltaFlow」を導入すると発表しました。
DeltaFlowはAlignedがMuntersと共同開発した液冷技術で、両拠点では第一期の設置・試験が始まっています。両プロジェクトを支える第一期投資は合計6億3000万ドルとされています。
ここで注意が必要なのは、6億3000万ドルは液冷設備だけの金額ではなく、両拠点を支える第一期投資の合計だという点です。
それでも、このニュースには意味があります。
これまでAIデータセンターと液冷の大型案件は米国、アジア、欧州を中心に語られることが多かったのですが、中南米にも実装地域が広がっています。
液冷メーカーにとっては、北米だけを見ていればよい市場ではなくなりつつあります。
6.NVIDIA DSX Readyは液冷市場の商流を変える可能性がある
9月21日/今回の最重要ニュース
出典記事:NVIDIA「NVIDIA Launches DSX Ready to Qualify Power and Cooling Products for AI Factories」(2026年9月21日)
NVIDIA公式記事を読む
参考資料:NVIDIA DSX Facilities Infrastructure Reference Design Overview
NVIDIA DSX設備リファレンスを読む
NVIDIA DSX Readyの開始は、この期間で最も重要なニュースです。
NVIDIA DSXは、AI FactoryについてGPUだけではなく、ネットワーク、電源、冷却、施設、ソフトウェアまでを一体として設計するためのプラットフォームです。
DSX Readyでは、その設計に使う具体的な製品・ソリューションをNVIDIA DSXの該当要件に対して認定していきます。
最初に選ばれたカテゴリーがBESSとCDUです。
BESSではHitachi Energy、LG Energy Solution、Tesla、CDUではLG Electronics、LiquidStack、Vertivが初期認定プロバイダーとして公表されています。
これは象徴的です。
AIデータセンターでは、GPUを購入しただけでは計算能力を使えません。
大量の電力を安定して供給し、GPUの負荷変動に対応し、その電力の大部分が最終的に変わる熱を外へ排出する必要があります。
そのためNVIDIAにとっても、電源と冷却はGPU販売の外側にある設備ではなく、GPUを稼働させるAI Factoryそのものの構成要素になっています。
今後、日本企業がCDU、ポンプ、熱交換器、冷却塔、バルブ、QDコネクタ、センサーなどでAIデータセンター市場へ参入する場合、
「NVIDIAを中心に形成されるAI Factoryの設計体系に、どう入るのか」
が重要になってきます。
7.Vertivの2.3MW CDUがNVIDIA DSX Ready第1号に
9月21日
出典記事:Vertiv「Vertiv Coolant Distribution Unit qualified as NVIDIA DSX ready for AI factory infrastructure」(2026年9月21日)
Vertiv公式リリースを読む
Vertivは、2.3MWのVertiv CoolChip CDUがNVIDIA DSX Ready CDUとして認定されたと発表しました。
Vertivによれば、2.3MWモデルは「NVIDIA DSX Ready」として最初に認定されたCDUです。
Liquid-to-Liquid方式で、Direct-to-ChipとRear Door Heat Exchangerの双方をサポートします。
ここで重要なのは2.3MWという数字だけではありません。
NVIDIAが設備のリファレンスデザインを作り、その要求仕様に対して液冷メーカーが製品を合わせるという関係が明確になってきました。
液冷メーカーが独自仕様のCDUを作り、顧客へ販売するだけの市場とは構造が変わってきています。
8.Schneider Electricが示した「液冷と水使用量」の関係
9月21日/100MWモデル
出典記事:Schneider Electric「Schneider Electric advances energy and industrial intelligence for a more resilient future at Climate Week NYC 2026」(2026年9月21日)
Schneider Electric公式発表を読む
同社が同日公表した調査資料は、**White Paper 220「Water Usage at AI Scale: Insights from a 100 MW Comparative Analysis」**です。
Schneider Electricは、100MW規模のAIデータセンターについて冷却方式と水使用量を比較しました。
同社のモデルでは、最適化された液冷AIデータセンターは、空冷AIデータセンターと比べ、年間のオンサイト冷却水使用量がDallasで48%、Parisで53%少なくなりました。
Dallasでは約38万2000m³から19万7000m³、Parisでは約10万8000m³から5万1000m³です。
ただし、これは実際に稼働しているデータセンターの測定結果ではありません。
100MWのモデル化されたデータセンターを比較した結果であり、Schneider Electric自身がMotivairを傘下に持つ液冷事業者であることにも留意する必要があります。
それでも、このレポートから読み取れることがあります。
「液冷にすれば水を大量に使う」「液冷にすれば水を使わない」という単純な話ではないということです。
最終的な水使用量は、液冷方式、冷却水温度、チラー、Dry Cooler、冷却塔、外気温などを組み合わせた設備全体で決まります。
AIデータセンターの立地選定では今後、電力容量だけではなくWUE(Water Usage Effectiveness)を含めた水の問題も経営課題になります。
9.LGの2.6MW CDU。「ラック単位」から「複数ラック単位」へ
9月22日
出典記事:LG Electronics「LG Electronics’ 2.6-Megawatt Coolant Distribution Unit Qualifies as NVIDIA DSX Ready CDU」(2026年9月22日)
LG公式リリースを読む
LG Electronicsの2.6MW CDUがNVIDIA DSX Ready CDUとなりました。
LGは600kW、1MW、2.6MWモデルについてインフラ資格認定を完了しており、2.6MWモデルは追加要件を満たしてDSX Readyとなっています。
LGが自ら説明している通り、AIラックの電力密度が数百kW級になることで、需要は個別ラック向けの冷却設備から、複数の高密度サーバーラックをまとめて処理するMW級集中型CDUへ移っています。
これはCDU市場の構造そのものを変える可能性があります。
小型CDUでは、ポンプ、熱交換器、制御装置をまとめた「機器」として考えることができます。
しかし2MW、3MWと大型化すると、周辺配管、一次側熱源、電源、制御、冗長化、保守スペース、水質管理などまで含めなければ成立しません。
つまりCDUの大型化は、部品メーカー同士の競争から、設備システムを組める企業同士の競争へ移ることを意味します。
10.Schneiderの3.5MW WCDUが示した「空冷を全部捨てない」設計
9月23日
出典記事:Schneider Electric「Schneider Electric launches new Motivair coolant distribution unit integrating liquid and air cooling for more flexible data center deployments」(2026年9月23日)
Schneider Electric公式リリースを読む
Schneider Electricの新しいWCDUは、最大3.5MWという冷却能力に加え、Fan Wallによる空冷と液冷を組み合わせられることが特徴です。
液冷と空冷の比率が変わっても、データホールを全面的に再設計しなくて済むことを狙っています。
また、CDUをホワイトスペース内部ではなくTechnical Corridorに配置する設計を想定しています。
単体のWCDUは最大3.5MW、最大20台をグループ運転でき、同社は30~40MW級データホールへの対応を想定しています。選定地域では2026年10月から出荷開始予定です。
これは日本企業にとって重要です。
既存データセンターを明日から100%液冷へ変えることはできません。
既存CPUサーバー、ネットワーク機器、ストレージなどには空冷機器も残ります。一方でGPUラックだけは液冷が必要になるケースがあります。
したがって現実のデータセンターでは、しばらくの間、
空冷+液冷のハイブリッド
が重要になる可能性があります。
Schneider Electric一社の製品から市場全体を断定することはできませんが、既存データセンターをAI対応させる際の一つの現実的な設計方向を示しています。
11.SupermicroがNVIDIA Vera Rubin NVL72を液冷設備込みで出荷開始
9月23日/今回もう一つの重要ニュース
出典記事:Supermicro「Supermicro Now Shipping NVIDIA Vera Rubin NVL72 Racks」(2026年9月23日)
Supermicro公式リリースを読む
Supermicroは9月23日、NVIDIA Vera Rubin NVL72ラックの出荷を開始したと発表しました。
1ラックに72基のNVIDIA Rubin GPUと36基のNVIDIA Vera CPUを搭載し、同社のDLC-2直接液冷システムと組み合わせます。
冷却については、コールドプレート、マニホールド、ホース、In-Row CDU、In-Rack CDU、Liquid-to-Air Sidecar CDU、Rear Door Heat Exchanger、施設側の冷却塔までをSupermicroのポートフォリオとして提供します。
In-Row CDUは1台1.8MWで、N+1冗長構成です。
さらにSupermicroは、5MWからギガワット級まで拡張するDCBBS Blueprintを用意しています。1 Scalable Unitでは16台のコンピュートラック、1,152基のRubin GPUを想定しています。
ここで注目したいのは、Vera RubinというGPUそのものではありません。
AIサーバーメーカーが、サーバーだけではなく、冷却塔まで販売・統合対象に入れていることです。
従来のデータセンターでは、サーバーベンダーと設備ベンダーは比較的明確に分かれていました。
しかし数百kW級のラックでは、サーバーと冷却設備を別々に考えることが難しくなります。
Supermicroは、ラック、電源、CDU、冷却塔、現地設計、試験、据え付けまでを一つのシステムとして提供し始めています。
液冷市場で誰と競争するのかを考える際、日本企業はCDUメーカーだけを見ていてはいけません。
SupermicroのようなAIサーバー企業そのものが、液冷インフラ企業になり始めています。
前号から何が変わったのか
前号と今回をつなげると、液冷市場の変化がわかりやすくなります。
| 前号まで | 今回具体化したこと | 意味 |
| 液冷市場への大型投資・再編が始まった | LITEONがDCXへ約1.76億ドル投資 | 電源企業が液冷を取り込む |
| AIラックの発熱量が急増 | NVIDIA DSX設計ではVera Rubin NVL72が330kW級 | 数百kWラックが設計前提になる |
| CDU大型化が予想されていた | 2.3MW、2.6MW、3.5MWが相次いで登場 | MW級CDUが現実の商品になる |
| 液冷の標準化が重要 | NVIDIA DSX Ready開始 | GPUメーカーが設備認定に入る |
| DTC+CDU+設備全体の統合が必要 | DeltaとSupermicroがフルスタック化 | 単品からシステム競争へ |
| 水使用量が立地問題になる | 100MWモデルで水使用量を比較 | WUEを設計段階で見る必要 |
| 日本は実証案件中心 | 水冷GPUコンテナDC-PKGを商用提供 | 国内でも商品化段階へ |
前回からわずか3週間ですが、かなり変わりました。
特に大きいのは、
「液冷が必要になる」という議論から、「誰のどのCDUを、どのAI Factory設計に組み込むか」という具体的な調達の議論へ移ってきたことです。
日本企業への影響
1.CDUメーカーは「冷却能力」だけでは差別化できなくなる
2MW、3MW級のCDUが増えれば、「何MW冷やせるか」という能力だけでは差がつきにくくなります。
今後は、NVIDIAなどのレファレンスデザインとの整合性、冗長化、保守性、水質管理、制御、BMSとの連携、世界各地でのサービス体制などが重要になります。
2.ポンプ、熱交換器、バルブ、QD、配管企業には市場が広がる
MW級CDUでは、大流量の冷却液を安定して循環させる必要があります。
ポンプ、熱交換器、バルブ、シール、QDコネクタ、マニホールド、流量計、温度・圧力センサー、漏液検知など、日本企業が強い領域は多くあります。
ただし単体部品の性能が優れているだけでは、AI Factoryのサプライチェーンには入りにくくなります。
どのCDUメーカー、サーバーメーカー、ODM、設備企業と組むかが重要になります。
3.800VDCと液冷は別市場ではなくなる
LITEONとDCX、DeltaとNVIDIAの動きを見ると、800VDCと液冷は同じ設計問題として扱われ始めています。
GPUへ大量の電力を届ければ、その電力の大部分は最終的に熱になります。
したがって電力供給能力だけを増やしても、同じ規模の熱を処理できなければGPUを安定して動かせません。
AI Factoryでは「何MW受電できるか」と「何MW排熱できるか」がセットになります。
重電、電源、空調、熱交換、設備工事の境界が薄くなっていきます。
4.日本では「既存施設+液冷」「コンテナ+液冷」が大きな市場になり得る
米国の巨大AI Factoryと、日本企業の需要は必ずしも同じではありません。
国内製造業が必要としているのは、数百MWの巨大AIデータセンターとは限りません。
自社工場や研究所に数ラックから数十ラックのGPUを置き、機密データを処理する需要があります。
フィックスターズ、NTTPC、ゲットワークスの水冷GPUコンテナDCや、既存空冷設備と組み合わせられる液冷システムは、この需要に合っています。
日本では巨大案件だけでなく、分散型・オンプレミス型AI Factoryにも液冷市場が形成される可能性があります。
経営会議で確認しておきたい三つのこと
1.自社は液冷のどこで利益を取るのか
コールドプレートなのか、QDなのか、ポンプなのか、熱交換器なのか、CDUなのか、設備全体なのか。
市場が大きくなるほど、単純な「液冷市場に参入する」という議論では不十分になります。
自社が取るべきレイヤーを決める必要があります。
2.誰のレファレンスデザイン/サプライチェーンに入るのか
NVIDIA DSX Readyの開始によって、この問題は以前より重要になりました。
NVIDIA、Supermicro、Vertiv、Schneider Electric、Delta、台湾ODMなど、液冷を含むAI Factoryのエコシステムが形成されています。
自社単独ですべてを作るよりも、どの企業と組むかを先に決めた方が市場参入が早いケースがあります。
3.冷却性能だけでなく「運用」を検証する
液冷は、冷えることを確認すれば終わりではありません。
異なるGPU世代への対応、冷却液管理、漏液、交換部品、保守、冗長性、BMSとの連携、電力使用量、水使用量まで確認する必要があります。
PoC段階から実運用を想定した評価項目を設定することが重要です。
次の1カ月で確認したいポイント
次回までに特に確認したいのは、NVIDIA DSX Readyの対象製品がどこまで増えるかです。
NVIDIAはBESSとCDUから開始し、今後インフラやソフトウェアの追加カテゴリーを展開するとしています。
CDUについても、どのメーカー、どの容量帯が追加されるかを見る必要があります。
もう一つはVera Rubinです。
Supermicroが実際の出荷開始を発表したことで、今後はAIデータセンターへの導入案件が具体化していきます。
Vera Rubin世代では、ラック、CDU、一次側設備、800VDCなどがどの組み合わせで採用されるのかが注目点です。
そして日本では、水冷GPUコンテナや既存データセンターの液冷改修がどの程度商用案件につながるかを確認する必要があります。
結論
この約3週間で最も大きく変わったのは、液冷が「冷却技術」という一つの技術分野から、AI Factoryを成立させる基幹インフラへ移ったことです。
NVIDIAはDSX Readyを開始し、CDUをBESSと並ぶ最初の認定対象にしました。
Vertivは2.3MW、LGは2.6MW、Schneider Electricは3.5MWのCDUを投入しています。
Deltaは800VDC電源と3MW液冷をプレハブ型AIデータセンターとしてまとめ、SupermicroはVera RubinラックからCDU、冷却塔までを一括で提供し始めました。
日本でもNTTPC、ゲットワークス、フィックスターズが水冷GPUコンテナを商品化しています。
前号では、液冷市場が急速に大きくなっていることを確認しました。
今回、その市場がさらに一段進みました。
これから問われるのは「液冷をやるかどうか」ではありません。
どのAI Factoryのサプライチェーンに入り、電源・冷却・サーバーを組み合わせたシステムの中で、自社がどこを取るのかです。
日本企業にとって、液冷市場への参入を検討する段階から、具体的な提携先と製品ポジションを決める段階へ移りつつあります。


