[前回の2週間分のエグゼクティブサマリー]
調査範囲とCPOの定義
対象期間は、前回記事が公開された2026年8月19日の翌日から、本日2026年9月2日までの2026年8月20日~9月2日としました。前回記事では、米国の中国製光トランシーバ規制案、AevaのNPO、古河電工の増産、OpenLight/Tower/CadenceのInP-on-Si、Lumentum・Coherentの需要拡大、Sivers/SemiNexのInPレーザー開発などが取り上げられていました。したがって、これらは今回は再掲せず、その後に起きた企業の新しい動きだけを抽出しています。[1]
本稿のCPOはCo-Packaged Optics(コ・パッケージド・オプティクス)を意味します。Chief Product Officer、EV充電のCharge Point Operator、中古車のCertified Pre-Ownedも検討しましたが、指定記事がシリコンフォトニクス、InPレーザー、NPO、光インターコネクトを扱っているため、技術用語としてのCo-Packaged Opticsが明白です。光電融合については、CPOそのものだけでなく、シリコンフォトニクス基板、光源、先端パッケージング、APNなど、電子とフォトニクスの融合によってAIインフラの電力・帯域制約を解消する企業活動を対象としました。
エグゼクティブサマリ
この二週間で最も重要な変化は、CPOが「将来技術」から量産・供給契約・製造装置を巡る争いへ移ったことです。TSMCは2026年後半のCPO生産入りを示し、SoitecはPhotonics-SOIを複数年契約で囲い込み始めました。[2]
一方、前回記事で最大のボトルネックとして浮上したInPレーザーには、QuintessentがGaAs量子ドット・コムレーザーを顧客サンプリングし、代替技術による競争が始まりました。[3]
国内ではNTT、KDDI、NEC、1FINITY、楽天モバイル、OKI、住友電工がAPNの設計指針をITU-T標準に持ち込みました。日本の光技術にとって、国内独自仕様ではなくグローバルなマルチベンダー市場を取りに行く段階に入ったことが重要です。[4]
経営上は、光部品単体への投資よりも、基板→レーザー→PIC→先端実装→ネットワーク標準までを一つのサプライチェーンとして捉え、2027年需要を見据えて供給枠と顧客認定を先に確保することが重要になっています。これは以下の企業発表から導ける経営上の示唆です。[5]
主要ニュース比較
| 日付 | 企業・見出し | 出典 | 要点 | 日本企業への経営インパクト |
| 8月31日 | Soitec:Photonics-SOIを複数年契約で囲い込み | Reuters | AI向け光通信需要を背景に、前金・固定価格を含む複数年契約を導入。Photonics-SOI売上高は今期2億ドル超を最低ラインとする見通しです。[6] | CPO不足がレーザーだけでなくSiフォトニクス基板にも拡大。長期調達契約が競争力になる可能性 |
| 8月31日 | TSMC:2026年後半のCPO生産入りを示す | Taipei Times / SEMI | TSMC幹部はCPO生産を2026年後半に開始する計画を示し、2027年にシリコンフォトニクスが光トランシーバ市場の50%超になるとの見方を示しました。[7] | 2027年を「量産準備年」ではなく「本格市場年」として事業計画を前倒しすべき局面 |
| 8月25日 | Quintessent:4,000万ドル調達、GaAs量子ドット光源をサンプリング | M Ventures / optics.org | 1チップから8波長を生成するDWDMコムレーザーを顧客評価へ。InP光源への依存を減らす狙いです。[3] | 日本勢が強いInPは需要拡大と同時に代替リスクも発生。技術ポートフォリオの再評価が必要 |
| 8月21日 | 国内7社:APN設計指針をITU-T Y.3335として国際標準化 | NTT/KDDI/NEC/住友電工等 | 事業者をまたいだ低遅延・低消費電力ネットワークの共通設計指針を策定。2028年10月までに詳細アーキテクチャ標準も目指します。[4] | IOWN/APNを日本発の独自技術からグローバル市場へ展開する土台。海外案件獲得の機会 |
| 9月1日 | Kulicke & Soffa:CPOを先端実装装置の重点用途に明示 | K&S / PR Newswire | 同社はThermo-Compression BondingをCPO向けに位置づけ、CPOを先端ロジック、HBMに続く高度な異種集積用途と説明しました。[8] | 利益プールが光デバイスから実装・検査装置へ広がる。日本の装置・材料企業にも直接的な商機 |
重要ニュースと経営判断
Soitec — 「光の基板」の確保が始まった
要点: SoitecはAIデータセンター向け光通信で使われるPhotonics-SOIについて、顧客と前金、固定価格、最低購入量を含む複数年契約を締結しています。CEOのLaurent Remont氏はReutersに対し、Photonics-SOI売上高について、前年度の1億ドル強から今期は2億ドル超を「最低ライン」と位置づけました。Reutersによれば、同社はこの分野で約95%の市場シェアを持つと推定されています。増産は既存設備の再配置・追加装置を中心に進め、シンガポールの未装備スペースを活用するかを今後6~12カ月で判断する方針です。[6]
経営インパクト: 前回記事ではInPレーザー不足が中心テーマでしたが、今回のニュースはボトルネックがさらに上流のウェハー材料へ波及したことを示します。シリコンフォトニクスの市場が急拡大すれば、「必要になってからスポット調達」では間に合わず、基板供給枠そのものが競争資産になり得ます。これはSoitecの長期契約化からの推論です。[6]
推奨対応: Siフォトニクス関連事業を持つ日本企業は、2027~2028年の需要予測を基にSOIウェハーの必要量を再計算し、供給枠の長期確保と第二ソース開発を同時に進めるべきです。材料・ウェハー企業にとっては、Photonics-SOI代替技術や国内供給網への投資価値が高まっています。
TSMC — CPOの「量産時期」が具体化
要点: TSMCの先端パッケージ技術開発担当副社長K.C. Hsu氏は8月31日、CPOについて2026年後半の生産入りが予定通り進んでいると説明しました。また、2027年にはシリコンフォトニクスが光トランシーバ市場の50%超を占める可能性があるとの見方を示しています。TSMCはCOUPE(Compact Universal Photonic Engine)をパッケージ基板上に統合する方向です。[7]
経営インパクト: 前回記事のOpenLight/Tower/Cadenceの動きは「ファウンドリーとEDAのエコシステム形成」でした。今回はその先で、世界最大の先端半導体受託製造企業がCPOを量産フェーズとして扱い始めた点が新しい情報です。日本の材料・接合・検査・光コネクタ企業にとって、2027年案件への採用可否は今後数四半期の顧客認定で決まる可能性が高いと考えられます。[9]
推奨対応: 「CPO市場が立ち上がってから参入する」のではなく、TSMC系、NVIDIA系、Broadcom系のBOM・認定サプライチェーンに2026年度中に入ることを優先してください。特に低誘電材料、熱対策、精密接合、光結合、検査装置は、光素子メーカー以外の日本企業が取り得る有力ポジションです。
Quintessent — InP不足が「値上げ機会」だけではなく「代替技術リスク」に
要点: Quintessentは4,000万ドルのシリーズAを調達し、量子ドットを用いた単一チップDWDMコムレーザーの顧客サンプリングを開始しました。GaAsを使用し、一つのレーザー源から8波長を生成する設計で、同社は現在不足している複数のInPレーザーを置き換える選択肢として訴求しています。Cienaも今回の投資ラウンドに参加しています。[3]
経営インパクト: これは前回記事の「高出力InPレーザーがCPOのボトルネック」という議論に対する重要な更新です。InPメーカーには当面強い需要が期待できますが、供給不足が長引くほど、顧客はGaAs量子ドット、マルチ波長光源、光源数削減など代替アーキテクチャへの投資を加速させます。Quintessent自身もInP不足を製品投入の背景として明示しています。[10]
推奨対応: 日本のInP、エピ、レーザー関連企業は単純な増産だけでなく、「1レーザー当たりの波長数」「外部光源モジュール化」「GaAs/QDとのコスト比較」まで含めて技術戦略を見直すべきです。逆にGaAs、量子ドット、精密実装企業には新規参入余地があります。
国内7社 — APNを「IOWN内の仕様」から世界共通仕様へ
要点: KDDI、NTT、1FINITY、NEC、楽天モバイル、OKI、住友電工が主導した低遅延・低消費電力ネットワークの設計指針が、ITU-T勧告Y.3335として標準化されました。特定団体や実装方式に依存せず、異なる事業者間のAPNを相互接続しやすくすることが狙いです。7社は2028年10月を目標に、より詳細な機能アーキテクチャの勧告策定も進めます。[4]
経営インパクト: 日本の光電融合戦略にとって非常に重要です。独自規格は市場を囲い込める一方で普及を妨げます。Y.3335は逆に相互接続性を高めるため、NTT系以外を含む海外通信事業者へのAPN機器・光部品販売の障壁を下げる可能性があります。同時に、海外ベンダーも参入しやすくなるため、日本企業にとっては標準化=安泰ではありません。これは標準の設計思想から導く経営上の推論です。[11]
推奨対応: 通信機器・光部品メーカーはY.3335対応を製品ロードマップに反映し、国内キャリア個別仕様ではなく、マルチキャリア・マルチベンダー相互接続を前提とした海外PoCを早期に増やすべきです。
Kulicke & Soffa — CPOの競争領域が「先端実装装置」に拡大
要点: 半導体組立装置大手Kulicke & Soffaは9月1日、Thermo-Compression Bonding(TCB)を含む先端実装ポートフォリオをCPO用途へ明確に位置づけました。同社はCPOを、先端ロジックやHBMに加わる高帯域の異種集積用途と表現し、フラックスレス熱圧着など既存装置群で市場を狙います。[8]
経営インパクト: CPOの価値獲得先がレーザー、PIC、光トランシーバだけでなく、接合・アライメント・検査・熱設計など製造装置市場にも広がり始めたことを示す企業シグナルです。日本にはこの工程で競争力を持つ装置・材料メーカーが多く、必ずしも光半導体を自社開発しなくても市場参入できます。[8]
推奨対応: 半導体製造装置・材料企業は「CPO専業市場」として見るのではなく、HBM・チップレット・光電融合に共通する異種材料接合市場として営業・開発組織を統合して追うべきです。顧客側も、光部品メーカーだけでなくTSMCなどのOSAT/ファウンドリー、AIスイッチASICメーカーを攻略対象に加える必要があります。
前回記事から見える構造変化
前回記事の中心テーマは、「AI光通信需要の急増 → InP光源不足 → 生産能力・ファウンドリー確保」でした。[12] 今回の更新を重ねると、競争構造は次のように一段進んでいます。
光源不足 → 基板まで供給制約が上流化 → 代替光源が資金調達・顧客評価へ → TSMCが量産を具体化 → 接合・実装装置が利益プール化 → APNでは日本勢が国際標準化へ
したがって、日本企業にとって最大の経営課題は「CPO技術を持っているか」ではなく、どの量産エコシステムの、どの工程で不可欠なサプライヤーになるかです。Soitecの長期契約化とTSMCの量産時期の具体化を見る限り、2027年に向けては研究開発費よりも、供給契約、顧客認定、設備能力、第二ソース確保といった量産経営の意思決定の重要性が急速に増しています。[5]
参照URL一覧
前回記事
Sattu「過去2週間の光電融合・CPOニュース」2026年8月19日 [13]
Soitec
Reuters — Soitec locks customers into multi-year deals as AI wafer demand surges [6]
TSMC
Taipei Times — Silicon photonics expected to dominate AI growth, TSMC vice president says [7]
SEMI — Silicon Photonics Global Summit [14]
Quintessent
M Ventures — Quintessent Raises $40 Million Series A and Begins Sampling First Product for AI Optical Interconnects [15]
BusinessWire — Quintessent Raises $40 Million Series A and Begins Sampling First Product for AI Optical Interconnects
optics.org — Quintessent lands $40M series A; samples novel light source [10]
国内APN・ITU-T標準化
KDDI — AI時代の低遅延・低消費電力なネットワークの設計指針がITU-Tで国際標準化 [16]
住友電工 — 同発表 [17]
NEC — 同発表 [18]
楽天モバイル — 同発表 [19]
Kulicke & Soffa
PR Newswire / Kulicke & Soffa — Advances AI Infrastructure Through Co-Packaged Optics and Advanced Packaging Leadership [8]
[1] [12] [13] 光電融合 重要ニュース:海外/日本 8月18日まで2週間:東証プライム経営者用エグゼクティブサマリー〖さっつーのAIエージェント〗 | さっつーのAIエージェント:監修 今泉大輔
[2] [7] [9] Silicon photonics expected to dominate AI growth, TSMC vice president says – Taipei Times

[4] [17] AI時代の低遅延・低消費電力なネットワークの設計指針が ITU- …
[5] [6] Soitec locks customers into multi-year deals as AI wafer demand surges
[8] Kulicke & Soffa Advances AI Infrastructure Through Co-Packaged Optics (CPO) and Advanced Packaging Leadership
[10] Quintessent lands $40M series A; samples novel light source | optics.org
[11] [18] AI時代の低遅延・低消費電力なネットワークの設計指針 … – NEC
[14] Silicon Photonics Global Summit
[16] AI時代の低遅延・低消費電力なネットワークの設計指針がITU- …

[19] AI時代の低遅延・低消費電力なネットワークの設計指針がITU- …




