エグゼクティブサマリー
調査対象期間は2026年8月5日~8月18日(日本時間)の14日間です。 この期間の光電融合、CPO(Co-Packaged Optics)関連ニュースを俯瞰すると、最大の変化は、競争軸が「CPOを実現できるか」という技術デモの段階から、レーザー光源を確保できるか、量産可能なフォトニクス設計基盤を持てるか、パッケージングと光接続を含めたサプライチェーンを押さえられるかへ移り始めたことです。Aeva、OpenLight/Tower Semiconductor、Sivers/SemiNexの発表はいずれもこの変化を示しています。[1]
特に注目すべきは、InP(リン化インジウム)系の高出力レーザーがCPOの戦略部品として急浮上していることです。Lumentumは超高出力CPOレーザーの需要増と外部レーザー光源モジュールの初期受注を明言し、Sivers/SemiNexもCPO向け高出力・多波長InP光源の開発を開始しました。つまり、GPUやスイッチASICだけでなく、「光を作る部品」の供給能力がAIデータセンターの拡張速度を左右し始めています。[2]
日本企業には好機があります。古河電工は8月6日、データセンター関連需要を背景に光ソリューション、光半導体関連製品の増産を進め、DFBレーザーチップ、SOA、MTフェルールなどを明示しました。同時に同社は需給のタイト化も認識しており、日本企業にとってCPOは「将来技術への研究投資」ではなく、2026~2028年の設備投資・長期供給契約・共同開発案件として扱う段階に入ったとみるべきです。[3]
重要ニュース
- 8月5日:米国で中国製光トランシーバー規制案がサプライチェーン問題に浮上。 Reutersは、米FCCが中国製の新型光トランシーバーを対象とする輸入規制を検討していると報道し、8月5日にはInnolight、Eoptolink、TFC Opticalなど中国光通信関連株が下落しました。規制自体は未決定です。[4]
- 8月5日:AevaがAIデータセンター向け「Optical Connectivity」事業へ参入。 大手ハイパースケーラー向けNPO案件で顧客との共同開発契約を獲得し、2027年後半の初期導入、2028年の生産拡大を目標としました。同社の高出力光源技術はNPO/CPO向け外部レーザーにも展開されます。[5]
- 8月6日:古河電工、AIデータセンター需要を受け業績予想を上方修正。 光ソリューションと情報コンポーネントでデータセンター向け需要が旺盛で、光半導体製品、MTフェルール、VSFFコネクタなどの増産を進めます。[6]
- 8月11日:OpenLight、Tower Semiconductor、CadenceがInP-on-Siフォトニクス設計環境を統合。 TowerのPH18DAプラットフォームをCadence EDA上のOpenLight PDKから設計可能とし、400G~1.6T、NPO/CPOの量産設計を狙います。[7]
- 8月11~12日:LumentumとCoherentの決算がAI光インターコネクト需要の実需化を確認。 Lumentumは超高出力CPOレーザー需要と外部レーザー光源の受注を明示。CoherentもAIデータセンターで銅配線から光接続への移行が進み、製造能力拡大を優先投資するとしました。[8]
- 8月13日:SiversとSemiNex、高出力InPレーザーに340万ドルを投じる開発計画。 CPO用外部レーザー、多波長DFBアレイ、SOAを対象とし、2027年後半に顧客サンプルと初期生産を予定しています。[9]
ニュースから見える産業構造の変化
CPOのボトルネックが「光源」へ移っています
Lumentumの発表は重要です。同社は1.6Tの普及だけでなく、「ultra-high-power CPO lasers」の需要増、ELS(External Laser Source)モジュールの初受注、複数のNPO案件を挙げ、光接続がラック内へ入り始めたと説明しています。第4四半期売上高も10.06億ドルと前年同期比109.3%増でした。[10]
Sivers/SemiNexの発表は、その技術的理由を明確にしています。光学部品をスイッチのフェースプレートからASICの近傍へ移すほど、波長当たり光出力、電力変換効率、熱安定性がシステム全体のスケーラビリティを左右します。そのため高出力外部レーザー、WDM用多波長DFB、SOAが一体の設計課題になります。[9]
日本の経営者にとっては、CPO市場を「光トランシーバー市場」とだけ捉えると不十分です。今後の付加価値は、概念的には次のように分散します。[11]

「フォトニクス版ファウンドリーエコシステム」が形成されています
OpenLight/Tower/Cadenceの発表は、中長期的にはレーザー単体のニュース以上に重要です。PH18DAはInPをシリコン上に統合し、レーザー、変調器、アンプを一つのPICに集積でき、今回OpenLightのPDKがCadenceの一般的なIC設計フローから利用可能になりました。Towerは400Gおよび1.6Tのレーザー統合PICと、PIC/EICの協調設計をNPO/CPOへ展開するとしています。[7]
これはCPOが「熟練した光学メーカーだけが設計する特殊品」から、半導体に近いPDK→EDA→ファウンドリー→量産モデルへ向かう動きです。日本の材料・装置・パッケージ企業も、単なる部材販売ではなく、PDKやリファレンス設計に自社材料・実装条件を組み込ませられるかが競争力になります。これは今回の発表から導ける経営上の推論です。[7]
国内でも需要はすでに業績に現れています
古河電工の8月6日決算は、日本で最も分かりやすい実需シグナルです。第1四半期売上高は3,652億円で前年同期比24%増、営業利益は255億円で205%増となり、会社側はデータセンター関連製品の売上増を主要因に挙げました。通期営業利益予想も950億円から1,230億円へ引き上げています。[12]
特に光ソリューションでは、通期営業利益予想を270億円から430億円へ引き上げ、ローラブルリボンケーブル、MTフェルール・VSFFコネクタ、特殊ファイバを増産対象としています。情報コンポーネントでもDFBレーザーチップ、ラマン増幅用励起光源、SOAなど光半導体関連製品の増産を掲げています。[3]
つまり日本企業の機会は、CPOチップそのものだけではありません。光源、光増幅器、精密接続、ファイバ、放熱、パッケージ材料、検査・実装装置にも広がっています。[3]
日本企業・経営者への具体的示唆
短期では、2027~2028年を想定した供給能力を今から押さえるべきです。 Aevaは2027年後半導入・2028年量産、Sivers/SemiNexも2027年後半のサンプル・初期量産を予定しています。一方、古河電工はすでにデータセンター関連製品で需給のタイト化を認識しています。したがってレーザー、InP関連材料、ファイバ接続部品、先端パッケージ、熱対策を扱う企業は、2027年需要を待って設備投資を判断するのでは遅い可能性があります。[13]
調達側は、中国依存率を取締役会レベルで可視化すべきです。 米国の中国製光トランシーバー規制はまだ案の段階で、変更・撤回される可能性があります。しかしInnolightは世界データセンター向けトランシーバー市場で27%のシェアを持つとReutersは報じており、規制が実施されれば米クラウド事業者の調達コストや非中国サプライヤーの需給に波及する可能性があります。[14]
中期では「部品供給者」から共同設計パートナーへの移行が重要です。 OpenLight/Tower/Cadence型のエコシステムでは、設計初期に採用されたIP、材料、実装技術が量産にも残りやすくなります。日本企業はBroadcom、NVIDIAなどの最終システム企業だけでなく、フォトニクスファウンドリー、PIC設計会社、OSAT、EDAベンダーとの共同評価を増やすべきです。OpenLight/Towerの今回の動きは、この「design-in」の重要性が高まっていることを示しています。[7]
また経営KPIには、売上高だけでなく、ハイパースケーラー評価案件数、CPO/NPO向けdesign-in件数、認定済み生産能力、歩留まり、InPなど重要材料の複数調達率を置くことが有効です。これは今回の供給制約と設計エコシステム化から導かれる経営上の提案です。[15]
リスクと不確実性
最大の技術リスクは、CPOへの移行速度が一直線ではないことです。Aevaの最初の大型案件はCPOではなくNPOであり、2027年後半の導入を目標としています。CPOは熱、レーザー寿命、光結合歩留まり、保守性などを同時に解決する必要があるため、プラガブル→NPO→CPOが一定期間併存する可能性が高いと考えるべきです。[16]
供給面ではInPと高出力レーザーが焦点です。Coherentは生産能力拡大を優先すると表明し、LumentumもCPOレーザー需要増を確認しています。需要の立ち上がりが設備増強を上回れば、価格上昇、納期長期化、顧客による二重発注が起こる可能性があります。[8]
規制面では、米FCCの中国製トランシーバー案は正式規則ではありません。Reutersも変更または撤回の可能性を明記しており、中国側も利益が損なわれた場合の対抗措置を示唆しています。そのため、中国排除を前提に一方向へ設備投資するより、米国・日本・欧州・中国を分けた複線的サプライチェーン設計が妥当です。[17]
主要プレーヤーと注目ポイント
| 企業・研究主体 | 国・地域 | 役割/技術 | 今回の関連発表・意味 |
| 古河電工 | 日本 | DFBレーザー、SOA、光ファイバ、MTフェルール、冷却等 | 8/6、DC需要増を背景に光関連増産・業績上方修正。国内サプライチェーンの重要な需要指標です。[3] |
| Aeva | 米国 | 高出力光源、ELS、シリコンフォトニクス | 8/5、AIデータセンター光接続事業に参入。2027~28年のNPO/CPO市場を狙います。[5] |
| Lumentum | 米国 | InPレーザー、ELS、光トランシーバー | 8/11、超高出力CPOレーザー需要とELS初期受注を確認しました。[10] |
| Coherent | 米国 | レーザー、InP、トランシーバー、光接続 | 8/12、AIデータセンターの光化を背景に製造能力拡大を表明しました。[18] |
| OpenLight | 米国 | III-V/Si異種集積、PIC IP・PDK | 8/11、Cadence環境へのPH18DA PDK展開でCPO設計の量産化を促進します。[7] |
| Tower Semiconductor | イスラエル/グローバル | SiPhファウンドリー、InP-on-Si | PH18DAでレーザー・変調器・増幅器を統合し、1.6T NPO/CPOを狙います。[7] |
| Cadence | 米国 | EDA、フォトニクス設計環境 | 電子回路とPICの協調設計を一般的なIC設計フローへ近づけます。[7] |
| Sivers / SemiNex | スウェーデン/米国 | InP高出力レーザー、DFB、SOA | 8/13、340万ドル規模のCPO用光源開発を開始。2027年後半の初期生産を目標とします。[9] |
総じて、この二週間で最も重要な経営メッセージは、CPO競争が「ASICメーカーだけの戦い」ではなくなったことです。ハイパースケーラーのロードマップを起点に、InP光源、SiPh、PDK/EDA、先端実装、光コネクタ、ファイバ、冷却までが一つの産業チェーンとして再編されつつあります。日本企業は、古河電工の実績が示すようにその複数領域に参入余地がありますが、勝敗を分けるのは技術保有そのものよりも、2027~2028年の量産能力を先に確保し、グローバルなCPO設計エコシステムへ早期にdesign-inできるかだと考えられます。[19]
[1] [5] [13] [16] Aeva Reports Second Quarter 2026 Results – Wed, 08/05/2026 – 16:07
[2] [8] [10] Lumentum – Lumentum Announces Fourth Quarter and Full Fiscal Year 2026 Results
[3] [6] [12] furukawaelectric.com
https://www.furukawaelectric.com/ir/library/finalreport/pdf/2027/20260806_pre.pdf[4] Chinese optical module makers slump after report on planned US import ban | Reuters
[7] [11] [15] [19] OpenLight and Tower Semiconductor Expand PH18DA Photonics Ecosystem to Accelerate Photonic IC Development – Tower Semiconductor

[9] Sivers Semiconductors Announces $3.4M Program With SemiNex for Next-Generation InP Light Sources Used to Power AI Data Centers – Sivers Semiconductors

[14] [17] EXCLUSIVE: Trump administration drafting ban on Chinese data center devices, sources say | Reuters
[18] Coherent Corp. Reports Fourth Quarter and Full Year Fiscal 2026 Results


