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日本の液冷の先行事例、世界標準ORv3に準拠した日東工業の直接液冷ラック詳細スペック【産業調査】

今泉大輔です。先日アップした三菱商事子会社MCデジタルリアルティによる印西のNVIDIA最先端ラックスケール・AIサーバー検証施設「DRIL」において、世界標準ORv3に完全準拠したラックが採用されました。日本では初めてのケースです。(台湾にはORv3に対応したAIデータセンター製品を受託製造する企業が多数あります。ニデックが2018年に買収した台湾の液冷製品製造会社に関するレポートが以下です。シリコンバレーと直結した台湾の液冷受託製造エコシステムに関する記述があります。)

ニデックがAIデータセンター市場の先端「液冷」企業である理由。2018年に買収した台湾企業が奏功:経営者が読むNVIDIAのフィジカルAI / ADAS業界日報 by 今泉大輔:オルタナティブ・ブログ
セミナーで「液冷」を扱うことが多いので、日本で液冷を扱っている企業についても深堀...

そこで日本で液冷関連の製品を開発している方々の仕様上のお手本になると考え、詳細スペックをGemniのディープリサーチ・アルゴリズムで調査しました。Gemniは前提の知識として最先端のAIデータセンター内の各種設備等のスペック等も頭に入っており、隣接領域にある各ジャンルのテクノロジーとも整合した理解を持っています。しかるべき構造化プロンプトを与えるとこのような産業調査のレポートが得られます。

日東工業の「直接液冷・高密度対応のOCP ORV3ラック」がAIインフラ検証施設「DRIL」に採用
日東工業株式会社のプレスリリース(2026年8月20日 11時00分)日東工業の「直接液冷・高密度対応のOCP ORV3ラック」がAIインフラ検証施設「DRIL」に採用

日東工業では、ORv3準拠のラック製造の個別対応も行っているそうです。

日東工業:OCP ORV3ラック 個別受注対応

【はじめに】AIデータセンターの世界標準「ORv3」とは?

OCP ORv3(Open Rack Version 3)および直接液冷(DLC)アーキテクチャを理解する上で必須となる重要用語を、4つのカテゴリ(規格・寸法体系/給電/冷却・流体/筐体・ファシリティ)に分けて解説します。

1. 基本規格・寸法体系に関する用語

  • OCP(Open Compute Project)[cite: 1, 2] Meta(旧Facebook)社が2011年に立ち上げたオープンソース・ハードウェア設計プロジェクト。データセンターのサーバー、ラック、電源、配線などの仕様をオープンに共有し、業界全体で効率化と低コスト化を推進しています。
  • ORv3(Open Rack Version 3)[cite: 2, 3] OCPが策定したオープンラック規格の第3世代仕様。生成AI等の超高発熱・大消費電力ワークロードに特化して設計されており、48VDCバスバー給電と直接液冷(DLC)配管の統合を前提とした構造を持ちます。
  • 21インチ規格(vs 19インチ EIA-310)[cite: 2, 4] 従来の一般的な19インチラック(機器取り付け幅 約451mm)に対し、ラックの外幅(600mm)を維持したまま内部の機器搭載幅を21インチ(約537mm)に拡大した仕様。基板面積の拡大や大型コールドプレート、太径配管の実装空間を確保できます。
  • OU(Open U)[cite: 4] ORv3で採用されている垂直方向の高さ単位。従来のEIA規格の「1RU(44.45mm)」に対し、「1OU(48.00mm)」と約3.55mm高く設定されています。この垂直クリアランスの拡大により、厚みのある冷却ブロックや配管の取り回しが容易になります。
  • Zero-U(ゼロ・ユー) サーバーなどのIT機器を収容するメインスロット(OU空間)を消費しない、ラック内の余白スペース(側面ポストの外側や背面の隙間)のこと。ORv3では、このZero-U空間に冷却水マニホールドを配置することで、IT機器の搭載可能数を減らさずに大容量冷却を実現します。

2. 配電・電気インターフェースに関する用語

  • Power Shelf(パワーシェルフ)[cite: 1, 8] 各サーバーに個別搭載されていたAC/DC電源ユニット(PSU)を撤廃し、ラック単位で電力を一括変換・供給する集中電源棚。施設側の三相交流(AC 415V/480Vなど)を受け取り、直流(DC 48V〜50V)に高効率変換します。最新のORv3仕様では1段あたり33kWの給電能力を持ちます。
  • 48VDC / 50VDC バスバー(Busbar)[cite: 1, 11, 12] ラック背面の中心に垂直に敷設された、大電流を流すための厚い銅製導体(板状の給電母線)。各スレッドに太い電源ケーブルを個別に引く必要がなくなり、背面の配線混雑とエアフロー阻害を根本から解消します。
  • BarKlip(バークリップ)コネクタ[cite: 14] ITスレッドの後部に設けられた、バスバーに挟み込むように接続する専用プラグイン端子。サーバーをラックの奥へ押し込むだけで、ケーブルを接続することなく給電母線と直接・ワンタッチで結合します。
  • ORv3 HPR(High Power Rack)[cite: 12, 15] ORv3の拡張規格で、ラックあたり100kW〜140kW以上のAIシステム(NVIDIA GB200等)を収容するための超高電力仕様。母線電流が2,000A〜2,900A以上に達するため、大型バスバー、強化された接地経路(Grounding Path)、大容量33kW電源シェルフの複数段搭載に対応しています。

3. 冷却・流体工学に関する用語

  • DLC(Direct Liquid Cooling / 直接液冷)[cite: 17] 熱を発する半導体チップ(GPUやCPU)の上に金属製の水冷ブロック(コールドプレート)を直接密着させ、内部に液体を循環させて熱を直接回収・排出する方式。空気よりもはるかに高い熱伝導率と熱容量を持つ液体を用いるため、1チップあたり1,000Wを超える超高発熱も排熱可能です。
  • CDU(Coolant Distribution Unit:冷却液分配装置)[cite: 1, 17] 建物側の冷却水系統(一次側)と、サーバーラック内を循環する精密な冷却液系統(二次側)を熱交換器を介して分離・中継する装置。ポンプによる流量・圧力の制御、精密な温度管理、フィルターによる異物除去などを一括して行います。
  • バーティカル・マニホールド(Vertical Manifold)[cite: 6, 17] CDUから供給された大流量の冷却液を、ラック内の上下に並ぶ各段のサーバーへ均等に分配・回収するための垂直幹線配管(ヘッダー管)。ORv3ではラック背面の左右両端に供給用・還水用として1本ずつ垂直配置されます。
  • BMQC(Blind-Mate Quick Connector)[cite: 23, 24] ラック前面からサーバースレッドを押し込む動作だけで、冷媒配管を工具なしで自動連結するクイック継手。作業者がラック裏に回ってホースを手で着脱する必要がありません。スライド時のズレを吸収する首振り機構(フローティング構造)を備えています。
  • ドライブレーク(Dry-Break)構造[cite: 24, 25] 継手を外した瞬間に、内部のスプリング弁が閉じて液体の漏れを最小限(0.1ミリリットル台以下など)に防ぐバルブ機構。サーバー交換時に冷却液がサーバー内部や床面に垂れ落ちるのを防止します。
  • PG25 / PG50[cite: 20, 21] ラック内の二次側冷却液として標準的に使用される「プロピレングリコール水溶液」(25質量%または50質量%濃度)。凍結防止性能に加え、防食剤(インヒビター)を含有して銅やステンレスなどの金属腐食を抑制します。毒性が低く、データセンター設備で安全に取り扱えます。
  • チゲルマン方式(リバース・リターン方式) 各サーバーに流れる液体の「行き」と「帰り」の配管の長さの合計がどの段でも等しくなるように組む配管手法。手前と奥、あるいは上下の段で流路抵抗(圧力損失)が均一になり、特定の段に冷却液が偏って流れる冷却不良を防ぎます。

4. 筐体・ファシリティ・安全機構に関する用語

  • ドレインパン(受水トレイ) 万一の継手の緩みや配管破損によって冷却液が漏れ出た際、床下(フリーアクセスフロア)に液体が浸入するのを防ぐため、ラック最下部に設置される金属製トレイ。漏液センサーが配置され、早期検知を行います。
  • エアシールド(Air Shield)[cite: 1] ラック内部の空冷気流を最適化するため、側面の隙間を塞ぐ遮蔽板。サーバー背面から吐き出された熱風が、前面の吸気口側へ回り込んでしまう現象(ショートサーキット)を物理的に遮断します。
  • PUE(Power Usage Effectiveness)[cite: 1, 21] データセンター全体のエネルギー効率を示す代表的な指標。 「データセンター全体の総消費電力 ÷ IT機器自体の消費電力」で算出されます。値が「1.0」に近いほど、空調や給電変換ロスなどの付帯設備で無駄に消費される電力が少ない高効率なデータセンターであることを意味します。DLCの導入により空調ファンの電力消費が激減するため、PUEの大幅な改善が期待できます。

1. 19インチラックの物理限界とORv3の必然性

EIA-310 19インチ規格における空間枯渇と熱的チョーク

通信およびコンピューティング機器の実装基準として半世紀以上にわたりデファクトスタンダードであり続けたEIA-310規格(内部マウント幅19インチ、垂直単位高1RU=44.45mm)は、近年の超高密度アクセラレーテッド・コンピューティングの台頭により、物理的・熱力学的な限界に直面しています。従来のエンタープライズサーバー環境において想定されていたラック電力密度は5kW〜15kW、高密度構成でも20kW〜30kWにとどまり、床下プレナムやファンによる強制空冷方式が成立していました。

しかし、超大規模言語モデル(LLM)の分散並列学習を担う最新のAIアクセラレータは、半導体ダイ単体で1,000W〜1,200W超の熱設計電力(TDP)を消費します。これらを集積したラックスケールシステムは、単一ラックで100kW〜150kWに達する前例のない電力供給と排熱処理を要求します。

従来の19インチEIAラックをベースに直接液冷(DLC: Direct Liquid Cooling)を導入しようとすると、以下の深刻な空間的制約と流体抵抗の課題が顕在化します。

第1に、配電母線と個別配線の空間枯渇です。各サーバーシャーシに個別の交流・直流電源ユニット(PSU)を内蔵し、外部から太径のAC電源ケーブルを多数引き込む旧来の配電トポロジーでは、数十系統に及ぶケーブル束がラック背面開口部を物理的に占有します。

第2に、液冷配管と保守動線の干渉です。100kWを超える熱負荷を液体冷却で搬出するためには、内径1.5〜2インチ(約40〜50mm)級の垂直給排液ヘッダー(マニホールド)と多数の分岐フレキシブルホースをラック内に敷設する必要があります。19インチ規格の有効開口幅(約450mm)の内部にこれらを配管すると、IT機器の前後スライド挿抜軌道と完全に干渉し、スレッドの活線保守が事実上不可能になります。

第3に、空冷流路の圧力損失(背圧)の急増です。DLC環境下においても、電圧レギュレータモジュール(VRM)、メモリスタック、光トランシーバー等の周辺部品から発生する熱(全負荷の約15〜20%、150kW負荷時で22.5kW〜30kW)は空気側へ放熱されます。配管と電源線が密集した19インチラック背面では流路断面積が極限まで狭まり、排気静圧抵抗が増大することで、サーバー内部ファンの消費電力が跳ね上がり、システム全体の電力使用効率(PUE)を著しく悪化させます。

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イラスト・原作:ソラガスキ

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