エグゼクティブサマリー
- 最重要の構造変化は、「GPUを買えるか」より「電力・系統接続・資金を確保できるか」がAIデータセンターの成否を決め始めたことです。 米テキサス州は系統接続を求めるデータセンターを監査するため新規承認を一時停止し、豪州は新規・追加的な再エネの確保、接続費用の原因者負担、安定電源の裏付けなどを全国ルールに組み込む方針を示しました。日本企業も土地取得より先に「電力権利・系統接続・追加電源・蓄電・地域合意」を確定させる発想が必要です。 [1]
- AIデータセンターは不動産投資から、巨大な「コンピュート・ファイナンス」市場へ移行しています。 NVIDIAはApollo、BlackRock、Blackstone、Brookfield、Goldman Sachs、KKRと、長期的に5,000億ドル超の第三者資本を動員する独立型ファイナンス・プラットフォーム構想を公表しました。一方、NVIDIAがOpenAIのオハイオ案件への保証規模を従来協議額より縮小する見通しとも報じられており、資金量は拡大しても、テナント信用力、GPU残存価値、稼働率、電力調達条件への審査はむしろ厳しくなると考えるべきです。 [2]
- 日本では「地方・再エネ・海外資本」の組み合わせが一段と具体化しています。 秋田県の500MW級AIデータセンターについて、UAEの政府系投資会社Mubadalaが最大1兆円の投資を検討していると報じられました。ただし、Mubadalaのコミットメント、資金調達時期、持分構成は未公表で、報道ベースの未確定案件です。既存の秋田市・Bitgrit・エスツーの公式連携は確認できますが、2025年時点の投資規模見込みとは差があり、数字を確定案件として扱うべきではありません。 [3]
- 電力コストと供給制約への対策が、UPSだけでなくBESS、PPA、柔軟負荷制御まで広がっています。 日本のai&とVoltaiqは、日本国内のAIデータセンターでBESSを展開する計画を発表し、系統接続の迅速化、ピーク料金抑制、停電・系統擾乱時の稼働維持、バッテリー安全性管理を狙っています。豪州の政策も同じ方向を示しており、今後のAIデータセンターは「電力を買う施設」ではなく「電力を調達・貯蔵・制御する施設」になる可能性が高いです。 [4]
- 経済安全保障はGPUから光ネットワーク部品まで拡大しました。 米政権は中国製データセンター用光トランシーバーの新モデル輸入を制限する案を検討しているとReutersが報じました。まだ変更・撤回され得る未確定措置ですが、AIクラスタ内部の高速光接続まで原産国・サプライチェーン管理の対象になり得るため、日本企業はネットワーク機器を含む「China-free/trusted supply chain」への切り替えコストと納期を把握しておく必要があります。 [5]
調査範囲と評価軸
対象期間は2026年8月2日から8月15日までの14暦日としました。日本および米国、豪州、インド、欧州など主要市場を調査し、企業・政府の公式発表、企業IR・ニュースルーム、政府資料を優先し、未公表案件についてはReutersなど主要報道機関で補完しました。
評価軸は、ご指定の 投資・資金調達、建設・立地、電力・エネルギー供給、冷却・効率技術、規制・安全保障、人材・運用、ネットワーク接続・遅延、コスト・価格動向、提携・M&A、地政学・自然災害リスク の10項目です。
「検討」「協議」「計画」「報道」とされているものは確定契約と区別しています。特に秋田のMubadala案件、NVIDIA/OpenAIオハイオ案件、米国の中国製光部品規制、VantageのIPO・売却検討は、いずれも条件変更または不成立となる可能性があります。 [6]
欧州については、EU AI Actが8月2日に本格適用段階へ入り、AI Officeと加盟国当局の監督・執行が始まりました。ただし、これはデータセンターの電力・建設規制そのものではないため、以下の主要ニュースには独立項目として採用せず、AIデータセンター顧客との契約・コンプライアンス上の周辺要因として評価しました。 [7]
重要ニュースの箇条要約
- 【日本|8月6~7日】秋田500MW級AIデータセンターにMubadalaが最大1兆円投資を検討
要点: UAEの政府系投資会社Mubadalaが、秋田県で計画されている500MW級AIデータセンターに最大1兆円を投資する可能性が報じられました。ただし、Mubadalaの正式コミットメント、資金調達スケジュール、所有構造は発表されていません。Bitgrit、エスツー、秋田市が再エネで稼働するAIデータセンターとAI人材集積を目指す協定を締結済みであることは秋田市の一次資料で確認できます。 [8]
影響: 投資・資金調達、建設・立地、再エネ、人材、自然災害分散の全てにまたがる案件です。2025年のJETRO資料では300~500MW、2033年本格稼働、投資最大4,000億円との見通しだったため、今回報道される規模との差は今後の正式発表で確認する必要があります。 [9]
経営者への示唆: 日本のAIインフラ立地は東京・大阪の需要地近接型だけでなく、再エネ供給力と災害分散を軸とする地方型に海外長期資本を呼び込むモデルが現実的な選択肢になっています。ただし、土地・電力・資金の各契約が確定する前に「数千億円~兆円案件」として事業計画に織り込むのは時期尚早です。
- 【日本|8月4日】ai&とVoltaiq、日本のAIデータセンターでBESS活用を計画
要点: ai&とVoltaiqは、日本のAIデータセンターにBESSを展開する計画を公表しました。BESSによる系統接続の円滑化、ピークデマンド料金の低減、利用可能電力の拡張、系統障害時の稼働維持に加え、Voltaiqのプラットフォームでセル選定から運用までバッテリー品質・安全性を追跡するとしています。設置容量、投資額、対象拠点数は不明です。 [10]
影響: 電力・エネルギー供給、運用継続性、安全、コストの問題を一体化した動きであり、「蓄電池=非常用設備」から「系統制約を緩和する経済設備」への位置付け変化を示しています。 [10]
経営者への示唆: AIデータセンターのTCO評価では、電力量単価だけでなく、最大需要電力料金、接続可能容量、充放電収益、SLA損失回避、バッテリー劣化・火災リスクまで含めてBESSの価値を算定すべきです。
- 【米国|8月4日】テキサス州、データセンターの新規系統接続承認を監査のため一時停止
要点: テキサス州のGreg Abbott知事は、州の系統接続プロセスにおける新規データセンター案件の承認を監査完了まで停止するよう指示しました。ERCOTが審査している新規電力需要は約474GWで、州の過去最大ピーク需要の5倍超、申請の約90%がデータセンター由来だと知事は説明しています。事業者には需要電力、水使用量、税制優遇、所有構造、地域影響の緩和策などの追加情報が要求されます。 [11]
影響: 電力容量が豊富で企業誘致に積極的とみられていた地域でも、系統信頼性と住民負担を理由に政策が急転し得ることを示しました。電力接続許可そのものが土地以上に希少な事業資産になっています。 [12]
経営者への示唆: 海外AIデータセンター投資では、用地取得やGPU発注に先行して、接続権の法的確度、接続保証金、送電増強費、自治体・住民合意、案件取消時の回収可能額を投資委員会の必須審査事項にすべきです。
- 【米国・中国|8月4日】米国、中国製データセンター向け光トランシーバー規制を検討
要点: Reutersによると、米政権とFCCは中国製データセンター機器、とりわけ新型の光トランシーバーを対象とする輸入規制案を策定しています。光トランシーバーはAIクラスタ内で光ファイバー通信を担う重要部品で、当局はデータ窃取、マルウェア、サービス妨害などの安全保障リスクを問題視していますが、案は変更または撤回される可能性があります。 [5]
影響: GPU・半導体だけでなく、AIクラスタのネットワーク層に米中分断が波及する可能性があります。Reutersは代替ベンダーへの移行によって米クラウド企業のコストが上昇する可能性も指摘しています。 [5]
経営者への示唆: 米国向けAI事業や安全保障関連案件では、GPUだけでなくNIC、スイッチ、光モジュール、電源機器まで部品表を原産国別に可視化し、代替調達時の価格・納期・性能差をあらかじめ把握する必要があります。
- 【豪州|8月5日】「追加再エネを自ら持ち込む」AIデータセンター政策が鮮明に
要点: 豪州政府は、データセンターに新規・追加的な再エネを裏付ける証書取得を全国AI Standardで義務付ける方針を示し、PPAや再エネへの直接投資を選択肢としました。また、十分な安定電源を確保できることの証明、大規模AIデータセンターによる必要時の消費電力削減、系統増強を必要とする大口需要家への「原因者負担」も示しています。 [13]
影響: 立地側が電力を用意する従来型の企業誘致から、データセンター自身が新電源・安定化設備・系統費用を引き受ける“bring-your-own-power”型への政策転換です。豪政府によると、国内データセンター投資パイプラインは1,500億豪ドル超と推計されています。 [13]
経営者への示唆: 日本でも系統制約と電気料金への社会的関心が強まれば類似の議論が起こり得るため、候補地評価は「安い土地」ではなく、追加再エネ+蓄電・調整力+接続費を含めた電力調達可能性で行うべきです。
- 【グローバル|8月10日】NVIDIAと大手金融機関、5,000億ドル超のAIコンピュート資金動員構想
要点: NVIDIAはApollo、BlackRock、Blackstone、Brookfield、Goldman Sachs、KKRとのMOUを公表し、AIインフラ向けに長期的に5,000億ドル超の第三者資本を動員する独立したコンピュート・ファイナンス・プラットフォームを構築すると発表しました。これは「5,000億ドルが既にコミットされた」という意味ではなく、最終契約や条件・時期には不確実性があります。 [14]
影響: GPUを含むAIコンピュート設備を、インフラ金融・クレジット市場が引き受ける新しい資産クラスとして扱う動きが加速します。これによりAI事業者自身のバランスシートだけでは実現できなかった案件の大型化が可能になります。 [14]
経営者への示唆: 日本企業も「データセンターを全額自社保有するか、クラウドを借りるか」の二択ではなく、SPV、長期オフテイク、GPUファイナンス、インフラファンド、リースを組み合わせる資本政策を検討する段階に入っています。
- 【米国・シンガポール・豪州|8月10日】Anthropic、Macquarie、GICが専用DC投資プラットフォーム「Theseus」を設立
要点: Anthropic、Macquarie Asset Management、シンガポール政府系投資会社GICは、Anthropicをアンカーテナントとしてデータセンターを開発・運営・長期賃貸するTheseus Infrastructureを設立しました。Macquarie運用ファンドとGICがプラットフォームを保有し、各案件のエクイティの大半を拠出する計画で、当初は米国に重点を置きます。投資総額・MW数は不明です。 [15]
影響: AIモデル企業が土地・建物を直接大量保有するのではなく、長期資本のインフラ投資家に資産保有を切り出すモデルが明確になりました。Anthropicは、これら施設が原因となって消費者に転嫁され得る電力価格上昇を負担する方針も示しています。 [15]
経営者への示唆: AIデータセンター投資では「有力テナントとの長期契約」が金融商品化の中核になりますが、テナント集中リスクと契約終了時の設備転用性を同時に審査する必要があります。
- 【北米|8月11日】JLL:空室率1%、66GW建設中でも95%が事前契約済み
要点: JLLによると、北米のデータセンター需要は2026年上期に過去最高の25GWを吸収し、前年同期比で倍増しました。空室率は3年連続で約1%、建設中66GWの95%がすでにコミット済みで、現在契約するテナントの一部は2028年引き渡し分を確保しています。賃料は2020年比で約70%上昇し、年平均約9%の上昇だったとしています。 [16]
影響: 北米では供給増以上にAI需要が先行しており、データセンター容量の確保が「スポット調達」では難しくなっています。また今後30カ月の恒久的なデット・ファイナンスは7,000億ドル超になるとの見通しです。 [16]
経営者への示唆: 米国でAIサービスを展開する日本企業は、クラウド価格だけでなく2027~2028年の電力付き容量をいつ押さえるかを事業計画に入れるべきです。ただし、需要を過大評価したtake-or-pay契約は逆に固定費リスクになります。
- 【インド|8月13日】L&TとTogether AI、チェンナイでNVIDIA B300を1万基使うAI Factory
要点: Larsen & Toubro(L&T)はTogether AI向けにチェンナイでNVIDIA B300を1万基導入するAI Factoryを構築すると発表しました。拠点は将来GW級を想定し、第1期250MW、電力設備150MVAの準備があり、高性能ネットワーク、超低遅延相互接続、高スループット・ストレージ、AIインフラ運用を一体化します。L&Tの「Mega」受注区分は1,000億~1,500億ルピーです。 [17]
影響: インドがソフトウェア・人材供給地だけでなく、大規模AIコンピュート、データ主権、低遅延クラウドの供給拠点へ移行していることを示します。 [18]
経営者への示唆: インド・南アジア事業を持つ日本企業にとって、米国や日本へAI処理を戻す前提を再検討し、データ所在地、遅延、通信費、規制を含む地域内AI処理を比較する価値が高まっています。
- 【グローバル|8月11日】NVIDIA、既存DCにも導入可能な800VDC電源アーキテクチャを具体化
要点: NVIDIAは、2026年下期にMGX互換800VDC power rackを提供し、既存の交流電源設備を大幅に変更せずラック列内で800VDCを供給するロードマップを示しました。2027年には1列当たり最大2MWを支えるrow power centerを予定しており、80社超が仕様対応を進めています。 [19]
影響: AIデータセンターの設計競争はGPU性能だけでなく、変換損失、配電密度、ラック密度を含む電気アーキテクチャに移っています。2MW級のラック列を前提にすれば、冷却についても電源と切り離さず高密度設計を再評価する必要がある、というのが本調査からの推論です。 [19]
経営者への示唆: 2026~2028年に新設・改修する案件では、従来の低密度設計を固定せず、800VDC対応余地、液冷を含む高密度冷却、母線・変圧器・UPS/BESSの拡張性を設計条件に入れておくことが設備陳腐化リスクの低減につながります。
- 【米国・日本関連|8月14日】NVIDIA、OpenAIオハイオ案件の保証を縮小する見通し
要点: ReutersがWall Street Journalの報道として伝えたところでは、NVIDIAはOpenAIのオハイオ・データセンター案件で、従来協議されていた最大2,500億ドルから、第1フェーズについて1,200億ドル未満の保証へ支援計画を修正する見通しです。OpenAIは引き続き全体10GWの拘束力あるリースを協議しており、開発主体はソフトバンク傘下SB Energyですが、契約は未確定です。 [20]
影響: 史上最大級のAIデータセンターでも、投資家がスポンサーの保証エクスポージャーを問題視し、資金条件が見直される局面に入ったことを示します。 [20]
経営者への示唆: 「AI需要が強いからファイナンスは付く」という前提は危険です。アンカーテナント信用力、保証主体、建設段階、GPU世代交代、最終稼働率を別々にストレステストする必要があります。
重要ニュース比較表
| 日付 | 国/企業 | 要旨 | 影響カテゴリ | 経営者への示唆 |
| 8/4 | 日本/ai&・Voltaiq | 日本のAI DC向けBESS展開を計画。容量・投資額は不明。 [10] | 電力、コスト、安全、運用 | 蓄電池を非常用設備ではなく、接続容量・ピーク料金・SLAを最適化する経営資産として評価します。 |
| 8/4 | 米国/Texas・ERCOT | 新規DC系統接続承認を監査のため停止。約474GWの申請需要の約90%がDC由来。 [11] | 電力、建設、規制、地域リスク | 土地より先に系統接続権と地域合意を確保します。 |
| 8/4 | 米国・中国/FCC等 | 中国製光トランシーバーなど新型DC部品の輸入規制案を検討。未確定。 [5] | 安全保障、ネットワーク、コスト | 光通信を含む部品表の原産国と代替ベンダーを確認します。 |
| 8/5 | 豪州/連邦政府 | 追加再エネ、安定電源、需要柔軟化、接続費原因者負担をAI DC政策に組み込む方針。 [13] | 電力、規制、コスト、立地 | 「自前電源を伴うDC」を標準シナリオとして投資採算を試算します。 |
| 8/6~7 | 日本/秋田・Mubadala等 | 500MW級案件にMubadalaが最大1兆円投資を検討との報道。正式コミットは未公表。 [8] | 投資、立地、再エネ、人材、災害分散 | 地方再エネ+海外資本型の可能性を検討しつつ、未確定数字は投資判断から切り離します。 |
| 8/10 | グローバル/NVIDIA・金融6社 | AIインフラへ長期的に5,000億ドル超の第三者資本を動員するファイナンス構想。 [14] | 資金調達、提携、コスト | GPU・DCをSPV・リース・オフテイクと組み合わせる資本政策を検討します。 |
| 8/10 | 米国等/Anthropic・Macquarie・GIC | Theseusを設立し、長期リース型でAnthropic専用DCを開発。投資額・容量は不明。 [15] | 投資、提携、運用、電力 | アンカーテナント契約の価値と集中リスクを同時評価します。 |
| 8/11 | 北米/JLL | 上期吸収25GW、空室率1%、建設中66GWの95%がコミット済み。 [16] | 価格、供給、資金調達 | 米国AI容量は2028年を視野に早期調達し、過剰長期契約は避けます。 |
| 8/11 | グローバル/NVIDIA | 800VDC対応を具体化。2027年には最大2MW/列の電力供給構成を計画。 [19] | 効率、電力、冷却、設備設計 | 新設DCを旧来の電力密度で固定設計しないことが重要です。 |
| 8/13 | インド/L&T・Together AI | チェンナイにB300 GPU 1万基、250MW第1期のAI Factory。 [18] | 建設、ネットワーク、遅延、運用、人材 | APACのAI処理拠点を日本・米国だけでなくインドも含めて比較します。 |
| 8/14 | 米国/NVIDIA・OpenAI・SB Energy | オハイオ10GW計画でNVIDIA保証縮小の見通し。契約は未確定。 [20] | 資金調達、提携、リスク | 巨額案件ほどスポンサー保証とテナント信用力を厳格に分解評価します。 |
横断分析:日本企業にとって何が変わったのか
電力が「コスト項目」から「参入許可証」に変わっています。 テキサスの事例では、十分な土地と発電資源があっても系統信頼性を理由に新規案件を止め得ることが示されました。豪州はさらに一歩進み、追加再エネ、安定電源、接続費、需要柔軟性をデータセンター側に求めています。秋田案件も、再エネ、とりわけ風力資源を立地価値の中心に据えてきた計画です。したがって、日本で新規AIデータセンターを検討する場合、「土地→建屋→電力契約」ではなく、「電力・系統→地域合意→ネットワーク→土地→建屋」の順にフィージビリティを確認する方が合理的です。 [21]
資本は潤沢ですが、リスク選別も強まっています。 NVIDIAの5,000億ドル超の資金動員構想、Anthropic/Macquarie/GICの長期リース型プラットフォーム、JLLが予想する7,000億ドル超の恒久債務需要は、AIデータセンターが世界のインフラ金融市場の主要対象になっていることを示します。一方、OpenAIオハイオ案件で保証縮小が報じられたことは、資金調達額の巨大化と信用審査の緩和は同義ではないことを示しています。 [22]
M&A・資本市場でも同様です。Reutersは8月13日、Vantage Data Centersが約1,000億ドルの評価額でIPO、または全部・一部売却を検討しており、IPOの場合は約100億ドルを調達する可能性があると報じました。ただし正式プロセスは開始しておらず、取引を行わない可能性もあります。これはAIデータセンター資産への評価額上昇を示す一方、将来キャッシュフローを非常に高い前提で織り込む局面にあることも意味します。 [23]
「AIサーバーを入れられる建屋」と「次世代AI Factory」の差が拡大し始めています。 NVIDIAが既存施設でも導入可能な800VDC設計を出し、将来2MW/列を想定していること、L&Tが電力、GPU、高性能ネットワーク、低遅延相互接続、ストレージ、AI運用を一体として構築していることから、データセンターの競争力は単純な床面積や総MWでは測りにくくなっています。今後は「何MWあるか」より、そのMWをどのGPU密度、電力効率、冷却方式、ネットワーク帯域でコンピュートに変換できるかが重要です。 [24]
なお、冷却単独については、本調査対象期間の優先ソースの中で、上記の電力・資金・規制案件と同程度に経営判断を変える大型一次発表は限定的でした。 ただし2MW/列級への高密度化が現実のロードマップに入った以上、液冷を含む冷却と電源設計を分離して意思決定することは避けるべき、というのが本調査からの経営上の推論です。 [19]
ネットワークと安全保障も設備投資判断の一部になりました。 米国の光トランシーバー規制案は、これまでGPUや先端半導体中心だった経済安全保障が、AIクラスタの内部ネットワークまで下りてきたことを象徴します。同時にインドでは超低遅延インターコネクトを含む大規模AI Factoryが構築されており、ネットワークの「安全な調達」と「低遅延性能」を同時に達成する必要があります。 [25]
人材・運用面では、地域経済との結び付きが銀行融資・許認可にも影響するようになっています。 秋田市はデータサイエンティストの育成・雇用を正式な地域連携目標に含め、Theseusも建設雇用と恒久的運用職を創出するとしています。一方、JLLは北米で地域住民による電力、水、騒音への懸念が供給拡大の制約になっていると指摘しています。「雇用を何人作るか」「地域にどの程度の電力コストを負担させるか」はESG広報ではなく、プロジェクトのbankabilityを左右する社会的ライセンスとして扱うべきです。 [26]
自然災害については、今回の14日間に世界のAIデータセンター投資判断を大きく変更する新たな一次発表は限定的でした。一方、秋田計画では従来から、太平洋側の大規模地震リスクに対する地理的分散が立地上の利点として挙げられています。これは日本企業にとって、AI計算資源のBCPを「データの多重化」だけでなく、電力系統・通信経路・GPU在庫・運用人員を含む地域分散として設計すべきことを示唆します。 [9]
対応策・推奨
- AIインフラ投資の稟議基準を「MW確保ベース」に変更することを推奨します。 用地価格や建設費だけでなく、系統接続確度、利用開始日、追加再エネ、PPA/BESS、バックアップ電源、水、通信経路までを同一の投資モデルに入れます。テキサスと豪州の動きからみて、電力未確定案件の土地先行取得はリスクが高まっています。 [1]
- 2027~2028年のAI計算需要を今期中に三つのシナリオで容量化することを推奨します。 「国内ソブリンAI」「米国ハイパースケール」「APAC地域処理」に分け、必要GPU、MW、レイテンシー、データ所在地、予約期間を算定します。北米では空室率約1%、建設中容量の95%がすでにコミット済みであり、調達を必要時点まで先送りするリスクがあります。 [27]
- CFOとCIOが共同でAIインフラの資本政策を作るべきです。 自己資金、クラウド、コロケーションに加え、GPUリース、SPV、インフラファンド、長期オフテイクを比較し、同時にテナント信用力、GPU残存価値、稼働率、電力価格についてストレステストします。NVIDIAの資金動員構想とオハイオ案件の保証見直しは、資金調達機会とリスク審査強化が同時進行していることを示しています。 [2]
- AIデータセンター部品の「経済安全保障BOM」を作成することを推奨します。 GPUだけでなく、光トランシーバー、スイッチ、NIC、SSD、電源変換機器、BESSまでメーカー、製造国、代替ベンダー、切替リードタイムを把握します。米国向け案件では、規制案が成立しない場合でも、この作業自体が地政学リスクの低減になります。 [5]
- 新設・更新案件では、2030年までの高密度化を前提に設備を“オプション付き”で設計することを推奨します。 800VDCへの移行余地、液冷対応スペース、BESS、冗長光経路、ラック当たり電力密度の拡張余力を残し、現在のGPU世代だけに最適化し過ぎないことが重要です。NVIDIAの800VDCロードマップは、既存建屋を活用しながら高密度化する選択肢が急速に具体化していることを示しています。 [19]
[1] [11] [12] [21] Texas governor orders pause on new data center approvals pending audit | Reuters
[2] [14] [22] NVIDIA Partners With Apollo, BlackRock, Blackstone, Brookfield, Goldman Sachs and KKR to Establish AI Compute Infrastructure Financing Platforms to Mobilize Over $500 Billion of Third-Party Capital | NVIDIA Newsroom

[3] [6] [8] Mubadala Weighs Record US$6.3 Billion Japan AI Data Centre Investment (GlobalSWF) Global SWF

[4] [10] ai& Collaborates with Voltaiq to Ensure Quality, Reliability, and Safety of Battery Energy Storage for AI Data Centers

[5] [25] EXCLUSIVE: Trump administration drafting ban on Chinese data center devices, sources say | Reuters
[7] AI Act | Shaping Europe’s digital future
[9] 秋田市でAIデータセンター建設に向けた連携協定締結(日本、アラブ首長国連邦) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

[13] Speech to the National Press Club, Canberra | Ministers
[15] Anthropic, Macquarie Asset Management, and GIC announce strategic partnership to develop dedicated data center infrastructure at scale | Macquarie Group
[16] [27] Data center demand exceeds expectations in H1 2026
[17] [18] Larsen & Toubro Secures Mega* Order as part of a strategic partnership with Together AI to build India’s largest NVIDIA B300 AI Factory

[19] [24] Why Scaling AI Compute Performance Requires a New Power Architecture | NVIDIA Blog

[20] Nvidia scales back funding guarantee for Ohio OpenAI data center, WSJ reports | Reuters
[23] EXCLUSIVE: Vantage Data Centers explores IPO at $100 billion valuation or sale, sources say | Reuters
[26] Bitgrit, inc. ・ 株式会社エスツーとの連携協定締結(令和7年10月27日発表)|秋田市公式サイト



