[前回のエグゼクティブサマリー]
調査対象期間:2026年10月4日〜10月17日の14日間
情報基準日:2026年10月17日
想定読者:東証プライム上場企業の経営者、経営企画、研究開発、半導体・通信・電子部品・データセンター事業責任者
前号「光電融合/CPO重要ニュース:海外/日本 10月3日まで2週間」では、CPOが将来技術の説明段階から、
顧客案件、売上、外部レーザー、液冷、チップ間光通信を伴う具体的なAIインフラ事業
へ移ったと整理しました。
CoherentはCPO・NPOで20件を超える顧客案件を明らかにし、Ayar LabsとGUCは3kW超のAIパッケージを想定した熱解析で、空冷ではなく液冷が必要になることを示しました。
今回の14日間では、そこからさらに一段進みました。
10月12〜15日に米国San Joseで開催されたOCP Global Summit 2026を中心に、CPOは、
光半導体の技術デモから、ラック、液冷、電源、外部レーザー、着脱コネクタ、監視ソフトまでを含む「実装可能なシステム」
へ移り始めています。Open Compute Project
用語解説:OCP(Open Compute Project)
OCPは「Open Compute Project」の略称。データセンターで使用するサーバー、GPUシステム、ネットワーク機器、ストレージ、ラック、電源、冷却設備などについて、企業が仕様や設計情報を持ち寄り、業界共通のオープンな設計基盤を作る非営利の国際コミュニティ。
2011年にMeta(当時はFacebook)が主導して始まり、ソフトウェアのオープンソース開発で得られた利点を、データセンターのハードウェアにも適用することを目的としている。現在はデータセンターだけでなく、通信インフラやエッジコンピューティングにも対象を広げている。
Celesticaは、BroadcomのTomahawk 6–Davisson CPOを搭載した102.4Tbpsの液冷スイッチを発表しました。
Lightmatterは、1RUで204.8TbpsのCPOスイッチトレイと、AIアクセラレータへ光I/Oを直接入れる102.4TbpsのXPUトレイを公開しました。
Wiwynn、Ayar Labs、GUCは、CPO光エンジンを組み込んだ計算機を実際に稼働させ、光信号、温度、波長変動をリアルタイムで監視するライブデモを行いました。
ただし、今回のニュースを、
「CPOが勝ち、プラガブル光トランシーバーが消える」
と読むのは早計です。
CiscoとNVIDIAは、400G/レーンに対応する新しい高密度プラガブル規格「USFP」の策定を発表しました。
Credoを中心とする企業群は、少数の超高速光チャネルではなく、多数の比較的低速な光チャネルを並列に使う「SRMO」の標準化を開始しました。
今回見えた産業構造は、CPO一方式への一本化ではありません。
CPO、NPO、高密度プラガブル、PCIe over Optics、Wide-and-Slow型マイクロ光接続が、距離、電力、保守性、コストによって使い分けられる市場
です。
経営者にとって重要なのは、どの方式が最終的に一社だけ勝つかを予想することではありません。
どの方式が採用されても必要になる、光源、ファイバー、着脱コネクタ、精密実装、検査、液冷、監視制御のどこに自社が入るかです。
エグゼクティブサマリー
今回、経営陣が押さえるべき六つのポイント
| 論点 | 今回確認された変化 | 東証プライム企業への意味 |
| CPOの製品化 | Celesticaが102.4T液冷CPOスイッチを発表 | CPOが光デバイスからラック製品へ |
| Computeへの光I/O | Lightmatter、Ayar Labs陣営がXPU・計算機へ光を統合 | 光がスイッチからAIチップ直近へ |
| 液冷との一体化 | Celestica、Lightmatter、Metaが液冷設計を採用 | CPOと液冷は同一の設備市場になる |
| プラガブルの進化 | Cisco・NVIDIAが400G/レーンUSFPを提案 | CPO一強ではなく、用途別に方式が並存 |
| 標準化 | CredoのSRMO、OCPの開放型設計が進展 | 第二ソースと相互運用性が競争力になる |
| 日本企業の商機 | SENKOが着脱光接続、KDDI・NTT系がマルチベンダー光網を推進 | 部材・接続・運用層で参入余地が大きい |
1.今回の主要ニュース一覧
| 日付 | 企業・団体 | ニュース | 現在の段階 | 経営上の意味 |
| 10月8日 | Broadcom | 第3世代TH6-Davisson CPOを含むAIネットワーク体系を発表 | エコシステム展開 | CPOを複数システム企業へ展開 |
| 10月12日 | Celestica | 102.4T液冷CPOスイッチ「DS6005」 | 製品発表 | CPOがラック製品へ |
| 10月12日 | Lightmatter・Flex | 204.8T CPOスイッチ、102.4T XPUトレイ | 製造検証/PoC | スイッチとAIチップ双方を光化 |
| 10月12日 | Cisco・NVIDIA | 400G/レーン「USFP」規格を提案 | 仕様策定段階 | 高密度プラガブルがCPOと並存 |
| 10月12日 | Meta | 102.4T液冷スイッチ「IceCube」などを公開 | 自社インフラ設計 | ハイパースケーラーが開放型光網を主導 |
| 10月12日 | Lumentum・Astera Labs・Corning | PCIe 5 over Opticsを実演 | PoC | 光がGPU・メモリ接続へ |
| 10月12日 | Credoなど | SRMO標準化ワークストリーム開始 | 標準化初期 | Wide-and-Slow型光接続が第3の選択肢に |
| 10月13日 | Wiwynn・Ayar Labs・GUC | CPO統合計算機のライブ実演 | システム実証 | 熱解析から実機検証へ |
| 10月13日 | ams OSRAM | SRMO標準化へ参加 | 部品・標準化 | microLED・microVCSELをAI接続へ |
| 10月15日 | IOWN Global Forum・KDDI・NTT系 | マルチベンダーOCS、AI Computing Continuumを紹介 | 技術・標準化活動 | 日本勢が分散AI光網を推進 |
2.〖今回最重要〗Celestica――102.4Tbpsの液冷CPOスイッチをラック製品へ
10月12日
元記事:Celestica
「Celestica Introduces DS6005 Data Center Switch with Co-Packaged Optics」
Celesticaは、BroadcomのTomahawk 6–Davisson CPOを搭載したデータセンタースイッチ「DS6005」を発表しました。
主な仕様は、
- スイッチ容量:102.4Tbps
- ポート構成:64×1.6TbE
- 高さ:1.5OU
- OCP Open Rack v3対応
- 全面液冷
- Broadcom Tomahawk 6–Davisson CPO採用
このニュースが重要なのは、102.4Tbpsという数字だけではありません。
これまでCPOの発表では、
- 光エンジン
- レーザー
- スイッチASIC
- シリコンフォトニクス
- 試験用ボード
など、構成部品単位のニュースが多く見られました。
DS6005は、それらを、
スイッチ筐体、電源、液冷、管理機能を含むラック製品
としてまとめています。
従来のプラガブル型スイッチでは、筐体前面に多数の光トランシーバーを挿入します。
CPOでは光エンジンをスイッチASICの近くに置くため、高速電気信号を短くでき、消費電力や信号損失を抑えられます。
一方で、光エンジンが高価なASICと近接するため、
- 熱
- 故障時の交換
- ファイバー接続
- 外部レーザー
- 製造歩留まり
- 保守手順
が難しくなります。
Celesticaが液冷、OCPラック、64ポートの光接続までまとめて示したことは、CPOが「光技術」からデータセンター設備商品へ進んだことを意味します。
ただし、発表時点では、一般顧客への大量出荷や大規模商用稼働が確認されたという意味ではありません。
今後確認すべきなのは、
評価顧客、Design Win、出荷開始時期、価格、現場での交換方式
です。
3.Broadcom――第3世代CPOを「複数メーカーが作れるエコシステム」へ
10月8日
元記事:Broadcom
「Broadcom Redefines AI Infrastructure with Industry-Leading Networking Portfolio」
Broadcomは、OCP Global Summitに向け、AIネットワーク用のEthernetスイッチ、NIC、PCIe、CPOを一体化した製品体系を発表しました。
中核に置かれたのが、同社の第3世代CPOであるTomahawk 6–Davissonです。
Broadcomは、自社で完成品ラックを独占的に販売するのではなく、Celesticaを含むシステムメーカー、ODM、電源・冷却企業が共通仕様に基づいて製品化できるエコシステムを広げています。Broadcom Inc.
ここには、CPO普及の重要な条件があります。
ハイパースケーラーは、一社しか製造できない特殊な設備を数十万台規模で導入しにくいからです。
大量導入には、
- 複数のスイッチ製造企業
- 複数の光源供給企業
- 複数のファイバー・コネクタ企業
- 共通の液冷・電源仕様
- 共通の管理ソフト
- 相互交換可能な保守部品
が必要です。
つまりCPO市場の競争は、
最も高速な光エンジンを作る競争
だけではありません。
同じ基本設計を、複数の工場、複数のベンダー、複数の地域で量産できるか
というサプライチェーン競争になっています。
Broadcomの戦略は、CPOを自社の光デバイスだけで完結させるのではなく、Tomahawkを中心とする広い製造・設備エコシステムへすることです。
4.Lightmatter――1RUで204.8Tbps。CPOをスイッチとXPUの双方へ
10月12日
元記事:Lightmatter
「Lightmatter Delivers Open Rack CPO Switch and XPU Scale-Up Server」
Lightmatterは、Flexや光接続企業と共同で、二つのCPOシステムを公開しました。
一つ目は、204.8TbpsのCPOスイッチトレイです。
- 1RU
- 8基のPassage BiDi光エンジン
- Guide DR外部レーザー
- 液冷
- OCP Open Rack v3対応
という構成です。
Lightmatterはこれを、Flexと共同で開発した量産設計・製造工程を検証するためのシステムと説明しています。
二つ目は、102.4TbpsのCPO XPUトレイです。
- 4基のAIアクセラレータASIC
- 2基のCPU
- 2U
- 全面液冷
- ブラインドメイト式光接続
で構成されます。
こちらは、技術的な実現性を示すProof of Conceptです。商用量産製品と同じ段階ではありません。Lightmatter®
重要なのは「スイッチのCPO」だけではないこと
従来、CPOは主にEthernetスイッチの電力問題を解く技術として語られてきました。
しかしLightmatterのXPUトレイは、
AIアクセラレータそのものの入出力を光化する
方向を示しています。
GPUやカスタムASICの性能が上がっても、隣のチップやメモリへデータを送れなければ、演算器は待機します。
そこで、
- XPU間
- CPU―XPU間
- メモリプール
- ラック内Scale-Up
へ光接続を入れる考え方です。
つまりCPO市場は、
ネットワークスイッチの部品市場から、AI計算機そのもののアーキテクチャ市場へ拡大する可能性
があります。
5.Wiwynn・Ayar Labs・GUC――熱解析から「動く計算機」へ
10月13日
元記事:Wiwynn
「Wiwynn, Ayar Labs and GUC Advance Co-Packaged Optics with Live Demonstration of Integrated Optical Compute System」
Wiwynn、Ayar Labs、GUCは、CPO光エンジンを組み込んだ計算システムのライブデモを実施しました。
構成は、
- GUCのAI/HPC向けASIC
- Ayar LabsのTeraPHY光エンジン
- Ayar LabsのSuperNova外部レーザー
- WiwynnのORv3対応計算機
- 高度な液冷・熱設計
です。
デモでは、計算機を実際に動作させながら、
- 光信号の品質
- 温度
- 波長変動
- システム状態
をリアルタイムで監視しました。Wiwynn
このニュースは、前号の続編として特に重要です。
前号ではAyar LabsとGUCが、3kW超のCPOパッケージを想定した熱シミュレーションを公表し、
空冷では仕様を満たさず、液冷なら仕様を満たす
と説明しました。
今回は、その設計思想を実際の計算システムへ組み込みました。
つまり、
| 前号 | 今回 |
| 熱シミュレーション | ライブ計算機 |
| 光エンジン単体評価 | ASIC、レーザー、液冷を統合 |
| 温度条件の解析 | 実時間テレメトリー |
| 設計可能性 | システムとしての動作確認 |
へ進んでいます。
ただし、このデモも大量商用配備を意味するものではありません。
次に必要なのは、
- 長時間連続運転
- 振動・温度サイクル
- レーザー故障
- ファイバー交換
- 製造歩留まり
- 現場での保守時間
- 顧客Design Win
の確認です。
CPOの普及には、光が通ることだけでなく、
何年間、どれだけ安定して動き、異常をどれだけ早く発見できるか
が重要です。
6.Cisco・NVIDIA――「CPOで全部置き換える」のではなく、400G/レーンUSFPへ
10月12日
元記事①:Cisco
「Cisco Advances Scalability and Openness at OCP 2026」
元記事②:NVIDIA
「OCP Global Summit: NVIDIA Opens Vera Rubin Architecture」
CiscoとNVIDIAは、次世代の高密度プラガブル光モジュール規格「USFP」を提案しました。
USFPはUltra-Dense Small Form Factor Pluggableの略です。
主な構想は、
- 1レーン400Gbps
- 16本の全二重レーン
- 将来32レーンへ拡張
- OSFPに近い設置面積
- オープンな業界仕様
- 前面から着脱可能
です。
Ciscoは、200G/レーン世代と比べ、帯域密度を4倍、電力効率を約1.3倍にできる可能性を示しています。これはCisco側の設計目標・見通しであり、量産製品による第三者比較ではありません。シスコニュースルーム
CPOの最大の弱点は保守性
CPOは、光エンジンをスイッチASICの近くへ置くことで、高い電力効率と帯域密度を実現できます。
一方、故障時には巨大なスイッチトレイを停止・交換する可能性があります。
プラガブル型なら、故障した光モジュールだけを筐体前面から交換できます。
USFPは、
プラガブルの保守性を残しながら、400G/レーンでCPOに近い密度へ迫る
考え方です。
今回の発表から導かれるのは、CPOが失敗したという結論ではありません。
より現実的には、
| 用途 | 有力な方式 |
| 最大帯域密度、消費電力重視 | CPO |
| 保守性、交換性、複数ベンダー重視 | USFPなどプラガブル |
| ASICのすぐ近くまで光化 | NPO/CPO |
| GPU・チップレット間 | Optical D2D |
| 多数の並列短距離接続 | SRMOなど |
という使い分けが進む可能性があります。
経営判断で問うべきなのは、
CPOかプラガブルか
という二者択一ではなく、
どの距離、どの故障単位、どの保守体制に、どの方式を使うか
です。
7.Meta――102.4T液冷スイッチと、開放型Ethernet Scale-Up
10月12日
元記事:Meta Engineering
「OCP Summit 2026: Powering AI with Open Innovations in Scale-Up, Scale-Out, and Scale-Across Networks」
Metaは、AIネットワーク向けに、
- 液冷ネットワークラック「IcePack」
- 102.4Tbpsスイッチ「IceCube」
- EthernetベースのScale-Upネットワーク「Tahan」
- MetaRoCE
- OCP仕様に基づく開放型設計
を発表しました。
IceCubeは128×800Gのノンブロッキング構成で、Broadcom Tomahawk 6CまたはNVIDIA Spectrum-6を使う複数の構成を用意します。
また、次世代Scale-Upブレードでは102.4Tbpsスイッチを使い、8台のスイッチで1ラック72基のアクセラレータを接続する構想を示しています。Engineering at Meta
ここで重要なのは、Metaが特定の一社の独自ネットワークへ全面的に依存していないことです。
BroadcomとNVIDIAの双方を使える構成を持ち、OCPを通じて仕様を開放しようとしています。
ハイパースケーラーにとって、AI半導体やスイッチの性能だけでなく、
複数ベンダーへ切り替えられること
が戦略的な価値になります。
これは日本の部品企業にも重要です。
特定のスイッチ製品だけに依存する部品より、
- OCPラック
- 複数ASIC
- 複数光方式
- 複数液冷方式
で利用できる製品の方が、長期的な市場を取りやすくなります。
8.Lumentum・Astera Labs・Corning――PCIeも光で延長する
10月12日
元記事:Lumentum
「Lumentum, Astera Labs and Corning to Demonstrate 1060nm VCSEL-Based PCIe-over-Optics」
Lumentum、Astera Labs、Corningは、PCIe信号を光ファイバーで伝送する実証を行いました。
構成は、
- Astera LabsのScorpio PCIeスイッチ
- Lumentumの1060nm VCSEL
- Corningのマルチモードファイバー
です。
複数の32Gbps NRZチャネルを使い、PCIe 5.0リンクを正常に動作させました。investor.lumentum.com
これは量産製品ではなく、初期段階のProof of Conceptです。
それでも、光接続の市場がEthernetだけにとどまらないことを示しています。
PCIeは、CPU、GPU、SSD、アクセラレータなどをつなぐ基盤です。
AIラックの規模が大きくなると、電気配線では、
- 距離
- 信号損失
- 消費電力
- ケーブル太さ
- 配線密度
が制約になります。
PCIe over Opticsが実用化すれば、
GPU、メモリ、SSD、アクセラレータを、ラック内やラック間で柔軟に配置する
ことが可能になります。
将来的には、計算機を一台単位で買うのではなく、
CPUプール、GPUプール、メモリプール、ストレージプールを光で組み合わせる
構造へ進む可能性があります。
9.Credo――「少数の超高速光」ではなく、多数の並列光を使うSRMO
10月12日・13日
元記事①:Credo
「Credo Launches Short Reach Micro-Emitter Optics Standardization」
元記事②:ams OSRAM
「ams OSRAM Joins Credo-Led SRMO Initiative」
Credoは、OCP内で「Short Reach Micro-Emitter Optics:SRMO」の標準化ワークストリームを開始しました。
参加企業には、
- Credo
- AFL
- ams OSRAM
- BizLink
- Foxlink
- Heraeus Covantics
- SENKO
- YOFC
などが含まれます。
SRMOは、少数の光チャネルを極端に高速化するのではなく、
比較的低速な多数の光チャネルを並列に配置するWide-and-Slow型
を採用します。
標準仕様では、
- 電力
- エネルギー効率
- 信号方式
- 並列チャネル数
- フォームファクター
- コネクタ
- リンクバジェット
- コンプライアンステスト
などを共通化し、2027年のOCP承認を目指します。Credo Technology Group
なぜ低速チャネルを増やすのか
光通信では、1チャネル当たりの速度を上げるほど、
- 高価なDSP
- 高度な信号補正
- 消費電力
- 熱
- 製造精度
が増えます。
短距離のScale-Up用途では、超高速チャネルを少数使うより、多数のシンプルなチャネルを並列化した方が、電力とコストを下げられる可能性があります。
SRMOはまだ標準化初期であり、CPOやUSFPを置き換えると決まったわけではありません。
しかし、
AIラック内光接続に、第3の方式が形成され始めた
という意味があります。
10.日本企業の重要ポジション①――SENKOが「着脱できるCPO」を支える
LightmatterのCPOシステムでは、SENKO Advanced Componentsの光接続技術が採用されています。
LightmatterとSENKOは、着脱可能な「vClick」光インターフェースを開発し、SENKOのSEAT、MPC、ファイバーアレイ技術を組み込んでいます。
LightmatterのスイッチトレイやXPUトレイでは、この着脱構造によって、光ファイバーの接続、交換、組み立て、保守を容易にすることを狙っています。Lightmatter®
SENKO Advanced Componentsは、日本のSENKO Advanceが100%保有する光接続企業です。物流企業のセンコーグループとは別の企業です。SENKO Advanced Components, Inc.
CPOの実装では、光エンジンそのものが注目されがちです。
しかし、大量導入時には、
- 数百本のファイバーを短時間で接続できるか
- 製造時に位置ずれしないか
- 現場で取り外せるか
- 交換後に再調整が必要か
- 汚れや振動に耐えられるか
- 自動組立できるか
が重要になります。
日本企業にとっては、光半導体を作ることだけがCPO市場への参入方法ではありません。
CPOを量産可能・交換可能・保守可能にする接続部品
も、極めて重要な市場です。
11.日本企業の重要ポジション②――NTT・KDDI・1Finityは「AI Computing Continuum」へ
OCP Global Summit期間中
元記事:IOWN Global Forum
「2026 OCP Global Summit」
IOWN Global Forumは、OCP Global Summitで、AI計算資源を複数拠点へ分散し、光ネットワークで一体運用する「AI Computing Continuum」を紹介しました。
NTT、NTT DATA、NTT DOCOMO BUSINESS、1Finityなどが参加しました。
またKDDIとiPronicsは、複数メーカーのOptical Circuit Switchを相互運用し、AIクラスタを光で柔軟に再構成する技術について発表しました。IOWN Global Forum
これはCPOデバイスそのものの製品発表ではありません。
しかし、日本企業の光電融合戦略を見る上では重要です。
米国企業が、
- チップ直近
- ラック内
- スイッチ内
の光化を進める一方、日本勢は、
- データセンター間
- 地域間
- 分散GPU
- 光回線の動的切り替え
- マルチベンダーOCS
を重視しています。
つまり、光電融合市場には少なくとも二つのレイヤーがあります。
レイヤー1:Inside the AI Factory
GPU、XPU、スイッチ、ラックを光で接続する。
レイヤー2:Across AI Factories
複数のデータセンター、地域、GPUクラスタを光で接続する。
日本企業は後者に強い可能性があります。
電力のある地域へGPUを置き、都市部や他のデータセンターから利用するには、
低遅延、高信頼、動的切り替えが可能な光ネットワーク
が必要です。
12.今回見えた「五つの光接続方式」
今回の発表を、方式別に整理すると次のようになります。
| 方式 | 主な企業・事例 | 強み | 主な課題 |
| プラガブル/USFP | Cisco・NVIDIA | 交換性、複数ベンダー、既存運用との連続性 | 前面密度、電力 |
| NPO | 光エンジンをASIC近傍へ | CPOより交換しやすく、電気距離も短い | 配線・筐体設計 |
| CPO | Broadcom・Celestica・Lightmatter | 最大帯域密度、電力効率 | 熱、交換、製造歩留まり |
| Optical D2D/PCIe | Lightmatter、Lumentum陣営 | XPU、メモリ、アクセラレータまで光化 | 標準化、コスト、量産 |
| SRMO | Credo、ams OSRAM、SENKOなど | シンプルな多数並列光、低電力の可能性 | 2027年標準化予定、初期段階 |
この表から分かるのは、
一つの方式が、すべての距離と用途を支配するとは限らない
ということです。
CPOは、最大性能を必要とするスイッチで先行する可能性があります。
プラガブルは、交換性を重視する多くのデータセンターで残ります。
Optical D2DはAIチップやメモリの近くへ進みます。
SRMOは、短距離で大量の並列接続が必要なラック内ネットワークを狙います。
日本企業は、方式の勝敗を当てるより、
- ファイバー
- コネクタ
- レーザー
- 受光素子
- 基板
- 接着材料
- 精密位置合わせ
- 液冷
- 検査
など、複数方式に共通する層を取る方がリスクを抑えられます。
13.前号から何が変わったのか
| 前号まで | 今回 | 変化 |
| CPOで顧客案件が増加 | Celesticaが102.4Tスイッチを発表 | 顧客評価からラック製品へ |
| 3kWパッケージの熱解析 | Wiwynnでライブ計算機実証 | シミュレーションから実機へ |
| CPO・NPO・外部レーザー | LightmatterがスイッチとXPUへ統合 | 構成部品からシステムへ |
| 400G/レーン技術開発 | Cisco・NVIDIAがUSFP規格を提案 | 次世代プラガブルが具体化 |
| Optical D2D実験 | PCIe over Opticsを実演 | 光が計算機内部へ |
| 量産・保守性が課題 | SENKOの着脱インターフェースを実装 | 交換可能なCPOへ |
| CPOが有力方式 | USFP、SRMOなども台頭 | 複数方式の並存へ |
| APNでDCをつなぐ | マルチベンダーOCSを議論 | 分散AI光網の標準化へ |
前号の問いは、
CPOを大量に作り、冷却し、検査し、交換できるか
でした。
今回、次の問いが加わりました。
CPO、プラガブル、Optical D2D、SRMOのうち、どの距離と用途へ何を配置するか
です。
14.東証プライム企業の経営会議で確認したい六つのこと
1.「デモ」「製造検証」「製品発表」「量産」を区別する
今回の発表には段階の違いがあります。
- Celestica DS6005:製品発表
- Lightmatter CPOスイッチ:製造検証システム
- Lightmatter XPUトレイ:Proof of Concept
- Wiwynn/Ayar/GUC:ライブシステム実証
- USFP:仕様策定段階
- SRMO:標準化ワークストリーム
すべてを「商用化」と一括りにしてはいけません。
確認すべきなのは、
- 顧客サンプル
- Design Win
- 量産承認
- 月産能力
- 出荷開始
- 有償稼働
です。
2.光方式を用途別に決める
最初から「全ラックをCPOにする」と決める必要はありません。
- ラック内
- ラック間
- データセンター内
- キャンパス間
- 地域間
で、距離、帯域、交換性、コストは異なります。
用途ごとにCPO、USFP、コヒーレント光、APNを使い分ける必要があります。
3.保守単位を確認する
故障時に交換するものが、
- 光モジュール1個
- 外部レーザー
- ファイバーアセンブリ
- 光エンジン
- スイッチトレイ全体
- ラック全体
のどれなのかで、停止時間と保守費用は大きく変わります。
性能比較だけでなく、MTTR=平均修復時間を確認すべきです。
4.液冷と光を別部門で設計しない
Celestica、Lightmatter、Wiwynn、Metaはいずれも液冷を前提にしています。
光エンジンをASICへ近づけるほど、熱、波長安定性、コネクタ、配管が相互に影響します。
光通信、半導体実装、液冷、電源を初期段階から共同設計する必要があります。
5.第二ソースと標準化を確認する
確認すべきなのは、
- 光源の第二供給元
- コネクタの互換性
- OCP仕様への適合
- USFP・SRMOなどの標準化状況
- 故障時の代替品
- 複数ODMでの製造可能性
です。
100万台単位のAIインフラでは、一社依存が大きな事業リスクになります。
6.日本企業は「光チップを作れるか」だけで考えない
商機は、
- SENKO型の着脱接続
- 光ファイバー
- 精密フェルール
- ガラス・樹脂材料
- TIM
- コールドプレート
- 微細接合
- 光検査
- 波長監視
- OCS
- APN運用
に広がっています。
CPOそのものを作らなくても、CPOを大量運用できるようにする企業は不可欠です。
15.次の2週間で確認すべきポイント
次回は、OCP Global Summitで発表された技術が、実際の顧客評価と量産へ進むかを確認する必要があります。
特に重要なのは次の六点です。
Celestica DS6005
評価顧客、出荷開始時期、販売価格、Broadcom以外を含む第二ソースの有無。
Lightmatter
204.8Tスイッチの製造検証から顧客サンプルへ進む時期、102.4T XPUトレイの商用ロードマップ。
Wiwynn・Ayar Labs・GUC
ライブデモから、長時間信頼性試験、顧客Design Win、量産システムへ進めるか。
Cisco・NVIDIA USFP
仕様策定へ参加する企業、MSA・OCPでの公開範囲、コネクタ・レーザー・DSPの供給企業。
SRMO
2027年標準化へ向けた仕様公開、ハイパースケーラーや半導体メーカーの参加。
日本企業
SENKOの着脱光接続がどのシステムへ採用されるか。NTT、KDDI、1FinityのマルチベンダーOCSが実証から商用サービスへ進むか。
まとめ――CPOは「勝った」のではなく、システム市場へ入った
今回の14日間で、CPOの実装段階が一段進みました。
Celesticaは、Broadcom Tomahawk 6–Davissonを搭載した102.4Tbpsの液冷CPOスイッチを発表しました。
Lightmatterは、204.8TbpsのCPOスイッチと、AIアクセラレータへ光I/Oを直接入れる102.4Tbps XPUトレイを公開しました。
Wiwynn、Ayar Labs、GUCは、光エンジン、外部レーザー、液冷、ASICを統合した計算機を実際に動かしました。
Metaは102.4Tbpsの液冷ネットワークと開放型Ethernet Scale-Upを示しました。
Lumentum、Astera Labs、Corningは、PCIe信号を光で伝送しました。
一方で、CiscoとNVIDIAは400G/レーンのUSFPを打ち出し、プラガブル光学の交換性と開放性を残そうとしています。
Credo、ams OSRAM、SENKOなどは、多数の光チャネルを並列に使うSRMOの標準化を始めました。
つまり、今回のニュースは、
CPOが他方式をすべて駆逐した
ことを示すものではありません。
むしろ、
AI Factoryの中で、CPO、プラガブル、Optical D2D、SRMO、コヒーレント光を適材適所で組み合わせる市場が始まった
ことを示しています。
この市場で価値を持つのは、最高速度の光チップだけではありません。
- 大量に作れる
- 液冷できる
- ファイバーを接続できる
- 異常を監視できる
- 故障時に交換できる
- 複数メーカーから調達できる
- 規格が公開されている
という条件を満たすシステムです。
東証プライム企業にとって最大の問いは、
CPOが普及するかではなく、AI計算機の光化が進む中で、自社がどの不可欠な工程を取るのか。
です。
光源、接続、材料、実装、検査、液冷、電源、光ネットワーク。
日本企業が取れる市場は、CPOチップそのものよりも広い可能性があります。



