
米TeslaとSpaceXを率いるイーロン・マスク氏が、独自の半導体製造構想「Terafab(テラファブ)」について、2028年後半の量産開始を目指す方針を明らかにしました。
2026年10月20日のSpaceX決算説明会で、マスク氏は2027年5〜6月に研究用工場で最初の試作チップを動作させ、2028年第3四半期、遅くとも第4四半期に主力工場で量産を始めるという目標を示しました。
そのために、世界で唯一、最先端半導体の製造に使われるEUV(極端紫外線)露光装置を供給するオランダのASMLなど、半導体製造装置メーカーに納入を急いでもらっていると説明しています。
さらに翌10月21日のTesla決算説明会では、長期的な投資額が1,000億ドルを超える可能性にも言及しました。1ドル150円で換算すると15兆円以上です。
これは単にTeslaが半導体工場を新設するという話ではありません。Teslaの自動運転車と人型ロボット、SpaceXの宇宙AI計算基盤を支える半導体を、自社の事業戦略と一体化して設計・製造する構想です。
半導体の設計、製造、メモリー、先端パッケージングを一体化しようとするTerafabは、TSMC、Intel、ASML、そして東京エレクトロンをはじめとする日本の半導体製造装置メーカーにとっても、無視できない動きです。
ただし、マスク氏自身が、2028年の量産開始は極めて野心的な目標であり、実現できるかどうかは分からないと認めています。
今回は、SpaceXとTeslaの発表資料、2026年10月20〜21日の決算説明会、半導体製造装置メーカーの公開資料を基に、この構想の実態と実現可能性、日本企業にとっての商機を整理します。
1.Terafabは半導体の設計から製造まで一体化する構想
Terafabは、2026年3月に発表されたTeslaとSpaceXの半導体製造構想です。
同年4月にはTeslaのテキサス州オースティンのGigafactory敷地内で研究用工場の建設に着手し、8月にはSpaceXがテキサス州グライムズ郡を主力工場の建設地として発表しました。
Terafabの特徴は、最先端のロジック半導体だけを製造する計画ではないことです。
公式サイトでは、ロジック、メモリー、先端パッケージングを一つの施設にまとめる方針が示されています。
現在の半導体産業では、半導体設計を行う企業、製造を受託するファウンドリー、メモリーを製造する企業、半導体の後工程を担当する企業などが、それぞれ専門化しています。
例えば、NVIDIAが設計する高性能GPUはTSMCなどが製造し、必要なメモリーや先端パッケージング技術を組み合わせて製品になります。
Terafabは、こうした複数企業にまたがる工程を、可能な限り一体化しようとしています。
SpaceXが2026年6月5日に公開した株式募集目論見書には、Terafabの戦略として、露光用マスクの設計、ロジックとメモリーの製造、先端パッケージングの設計を、一つの閉じた開発・製造体系に統合する構想が記載されています。
同社が期待するのは、半導体の設計から試作、評価、製造工程の改善までを短いサイクルで繰り返せることです。
半導体メーカーから製品が届くのを待つのではなく、自社のAIシステムに必要な半導体を、自社の判断で改良していくことを目指しています。
ただし、現在は計画段階です。ロジックとメモリーを同じ施設で量産するための工程構成、製造能力、コスト競争力などは、今後の具体化を待つ必要があります。
参考:Terafab公式サイト
参考:SpaceX公式発表・Breaking Ground on Terafab in Texas(2026年8月6日)
2.TeslaとSpaceXが必要とする半導体は、実は大きく異なる
SpaceXの目論見書によれば、Terafabは主に二種類の半導体を製造する構想です。
一つは、Teslaの自動運転車や人型ロボット「Optimus」で使う、地上向けのエッジAI・推論用半導体です。
もう一つは、SpaceXが構想する宇宙空間のAI計算インフラ向け半導体です。
この区別は重要です。
Teslaの車両やOptimusでは、センサーなどから取り込んだ情報を、その場で短時間に処理する必要があります。消費電力、処理遅延、量産コスト、車載・産業用途に必要な信頼性が重要になります。
一方、SpaceXの宇宙AI計算インフラは、地上の車両や工場とは異なる条件で稼働します。
宇宙では、放射線、熱制御、電力、故障時の保守の困難さなどを考慮する必要があります。
宇宙用半導体に求められるのは、単純な演算性能だけではありません。放射線による誤動作への対策、長期間の動作信頼性、電力効率などが重要になります。
Terafabは、こうした異なる用途の半導体を、一つの巨大な事業構想の中で開発・製造しようとしているわけです。
この背景には、TeslaとSpaceXが将来必要とするAI計算資源を、外部サプライヤーからの供給だけでは十分に確保できないかもしれないという問題意識があります。
SpaceXは、両社の将来的な半導体需要が、計算能力換算で1TWを超えると説明しています。
ここで注意すべきなのは、1TWという数字の意味です。
これは、半導体工場が1TWの電力を消費するという意味ではありません。Terafabが長期的に目指す、年間製造分の半導体が提供する計算能力を電力規模で表した構想上の数字です。
現時点で、どの半導体を何個製造すればこの目標を達成できるのか、具体的な製品構成や量産歩留まりまで含めて確定しているわけではありません。
また、SpaceXの目論見書は、Terafabを建設した後も、外部のサプライヤーから相当量の計算用ハードウェアを引き続き調達する方針を明記しています。
つまりTerafabは、既存の半導体メーカーとの取引をすべて置き換える計画ではなく、自社の製造能力を追加して、半導体調達の選択肢を増やす構想です。
参考:SpaceX株式募集目論見書(2026年6月5日、75ページ付近)
3.2027年に試作、2028年後半に量産という日程は実現可能か
今回、最も注目されるのが、マスク氏が示した工場の立ち上げ日程です。
2026年10月20日のSpaceX決算説明会では、次の目標が示されました。
| 時期 | 目標 |
| 2026年 | オースティンの研究用工場の整備を進める |
| 2027年5〜6月 | SRAMを利用した最初の試作チップの動作確認 |
| 2028年第3〜4四半期 | グライムズ郡の主力工場で量産開始を目指す |
| 長期目標 | 年間1TW相当の計算能力を生み出す半導体製造体制 |
最初の試作に用いるSRAMは、電源が供給されている間、データを保持する半導体メモリーです。
半導体工場の開発段階では、SRAMを利用したテスト回路が、トランジスタや配線の製造工程を評価するために使われます。
つまり、2027年5〜6月に試作チップが動作したとしても、それだけで自動運転用AI半導体や宇宙用AI半導体を量産できるようになるわけではありません。
試作チップによって、基本的な製造工程が動作することを確認した後も、製品設計への適用、製造条件の最適化、欠陥の削減、歩留まりの向上などが必要になります。
ここでいう歩留まりとは、製造した半導体のうち、正常に動作する良品がどの程度得られるかを示す指標です。
最先端半導体の製造では、製造工程を確立した直後から、十分な歩留まりで大量生産できるとは限りません。
さらに、最先端ロジック半導体とメモリーでは、製造工程も異なります。これらを組み合わせる先端パッケージングにも、別の技術と設備が必要になります。
2028年後半に量産を開始するという目標は、どの半導体を、どの製造プロセスで、どれだけの数量製造するのかによって、実現の難しさが大きく変わります。
マスク氏自身も、10月20日の説明会で、この日程には大きな不確実性があることを認めています。
したがって、2028年後半という数字は、量産開始が確定した日程ではなく、同社が追求している非常に野心的な目標として理解する必要があります。
参考:SpaceX 2026年第3四半期決算説明会(10月20日)
4.最初の大きな関門はASMLのEUV露光装置
Terafabが最先端のロジック半導体を製造するのであれば、世界で最も高度な半導体製造装置を確保する必要があります。
その代表がASMLのEUV露光装置です。
半導体の製造では、シリコンウエハーの表面に、極めて細かい回路パターンを形成します。
露光装置は、そのパターンをウエハーへ転写するための装置です。
最先端半導体の製造では、波長13.5nmの極端紫外線を利用するEUV露光技術が重要な役割を果たしています。
このEUV露光装置を商業的に供給しているのは、現在ASMLだけです。
2026年10月20日のSpaceX決算説明会では、Morgan Stanleyのアナリストが、Terafab向けのEUV露光装置をすでに発注しているのか、いつ納入されるのかを質問しました。
これに対しマスク氏は、発注の有無や具体的な納入日程を直接回答せず、ASMLや他の装置サプライヤーが納入を加速していることへの謝意を述べました。
このため、ASMLがTerafabの準備に関連していることは分かりますが、どの型式のEUV露光装置を何台発注したのか、いつ搬入されるのかは、公開情報だけでは確定できません。
さらに重要なのは、露光装置が納入されても、直ちに量産できるわけではないことです。
装置の搬入、据え付け、調整、他工程との接続、製造条件の最適化、量産時の安定稼働確認などが必要になります。
これらの工程は互いに関係しており、一つの装置だけを早く動かせばよいわけではありません。
マスク氏が目指す短期間での立ち上げは、装置メーカーの納期だけでなく、工場全体の工程開発と立ち上げ能力にも依存します。
参考:Reuters・SpaceX and Tesla’s Terafab targets 2028 for volume chip production(10月20日)
5.東京エレクトロンには、どのような商機が考えられるか
Terafabの構想は、日本の半導体製造装置メーカーにとっても重要です。
2026年10月28日時点で確認した公開資料では、東京エレクトロンがTerafabから具体的な製造装置を受注したことまでは確認できません。
一方、Terafabが最先端半導体の製造設備を整備するのであれば、東京エレクトロンが得意とする工程の装置が必要になることは十分に考えられます。
東京エレクトロンは、半導体製造の主要工程である成膜、塗布・現像、エッチング、洗浄に対応する装置を供給しています。
例えばEUV露光を行う工程でも、ASMLの露光装置だけでは半導体を製造できません。
露光の前には、ウエハーに感光材を塗布する必要があります。露光後には、現像によって回路パターンを形成します。
そのパターンを利用して、必要な部分を削るエッチングや、ウエハー表面に薄膜を形成する成膜などの工程を繰り返します。
さらに、微細な欠陥を防ぐための洗浄も欠かせません。
東京エレクトロンは、こうした製造工程に関連する装置を幅広く提供しています。
Terafabが量産工場として具体化するのであれば、東京エレクトロンなどの日本の半導体関連企業に商機が考えられる分野は以下のようになります。
- 塗布・現像装置:EUV露光と組み合わせて使用される装置
- エッチング装置:微細な回路や立体的な半導体構造を形成する装置
- 成膜装置:絶縁膜や金属膜などを形成する装置
- 洗浄装置:製造工程で発生する汚染や残留物を除去する装置
- 先端パッケージング関連装置:複数の半導体を高密度に接続するための装置
ここで興味深いのは、Terafabがロジック、メモリー、先端パッケージングまでを一体化する構想であることです。
こうした構想が実現する場合、必要になる製造装置は露光装置だけではなく、非常に幅広いものになります。
東京エレクトロンにとっては、工場全体の工程構成が明らかになった時に、どの部分で自社技術を提供できるのかが重要になります。
また、米国で新たな半導体製造拠点が立ち上がる場合、装置の納入後に行う設置、調整、保守、工程改善などの技術支援も必要になります。
新しい半導体工場を短期間で立ち上げるには、製造装置メーカーと工場運営企業との密接な連携が不可欠です。
東京エレクトロンをはじめ、日本の装置メーカーにとっては、Terafabの装置採用に加えて、立ち上げ段階での技術支援が事業機会となる可能性があります。
6.IntelはTerafabに協力を表明
Terafabでは、ASMLなどの装置サプライヤーだけでなく、半導体製造企業であるIntelの役割も注目されます。
Intelは2026年4月、SpaceX、xAI、Teslaとの協力を通じてTerafabを支援する方針を明らかにしました。
Intelのリップブー・タンCEOは、同月の決算説明資料で、半導体製造プロセスの効率を改善する新しい方法を探求する考えを示しています。
この協力が重要なのは、半導体工場の立ち上げには、製造装置を購入することに加えて、工程を設計し、品質を管理し、生産を安定させる技術と経験が必要になるからです。
Intelは長年にわたり、先端半導体の設計と自社製造に取り組んできました。現在は外部顧客向けの半導体製造受託事業も展開しています。
そのため、Terafabにおいても、製造技術やプロセス開発の知見を提供する役割が考えられます。
ただし、Intelが具体的にどの製造工程を担当するのか、Terafabの工場を共同運営するのか、自社の製造プロセスを提供するのかについて、詳細は明らかになっていません。
IntelがTerafabの製造を全面的に引き受けることが決まったわけではありません。
マスク氏は、Terafabの工場を自社側で運営する意向も示しています。
Intelとの協力は、Terafabの技術開発を支える重要な要素になり得ますが、その具体的な事業形態は今後の発表を待つ必要があります。
7.TerafabはTSMCの競争相手になるのか
Terafabの構想を理解するうえで、最も重要な論点の一つがTSMCとの関係です。
TeslaやSpaceXが独自の半導体製造能力を持つことになれば、これまで外部企業へ委託していた半導体の一部を自社で製造する可能性があります。
その意味では、TerafabはTSMCなど既存の製造企業にとって、将来的な競争要因となり得ます。
しかし、Terafabが直ちにTSMCに代わる巨大ファウンドリーになるという見方には注意が必要です。
TSMCが提供しているのは、工場の生産能力だけではありません。
最先端の製造プロセス、設計企業が利用する設計環境、量産技術、歩留まり改善能力、先端パッケージング、そして多数の顧客への安定供給を含む、総合的な製造サービスです。
最先端半導体の製造には、個別の設備や技術だけではなく、これらを長期間にわたり蓄積した組織的な能力が必要です。
Terafabが2028年後半に一部の半導体の量産を開始できたとしても、その時点でTSMCと同等の製品構成、生産量、歩留まり、顧客基盤を実現できるわけではありません。
また、SpaceX自身が、Terafabの建設後も外部サプライヤーから相当量の計算用ハードウェアを調達し続ける方針を示しています。
このため、少なくとも当面は、TSMCなどからの調達を継続しながら、自社の製造能力を増やしていく形が現実的と考えられます。
Terafabが将来、どの製造技術で、どれだけの良品チップを、どの程度のコストで生産できるかによって、TSMCとの競争関係は変わります。
注目すべきなのは、TeslaとSpaceXが半導体製造を自社の経営課題として捉え始めたことです。
これまでは半導体メーカーへ製造を委託する企業だった両社が、製造工程そのものを事業戦略の中へ取り込もうとしています。
これは、今後のAI産業で半導体の製造能力を誰が確保するかという、競争構造の変化を示しています。
8.最大1,000億ドル超の投資は、誰が負担するのか
Terafabの実現性を考える際、製造技術と並んで重要なのが資金調達です。
2026年10月21日のTesla決算説明会で、マスク氏はTerafabの投資額について、2028年初めまでに設備投資だけで少なくとも数百億ドル規模になり、長期的には1,000億ドルを超える可能性があると説明しました。
さらに、TeslaとSpaceXの間で投資負担をどのように分担するかについては、まだ検討が必要だと述べています。
Teslaのヴァイバブ・タネジャCFOは、オースティンの研究用工場について、必要な初期設備の大半をすでに発注したと説明しました。
ここでは、研究用工場の設備発注が進んでいることと、主力量産工場への巨額投資が確定していることを区別する必要があります。
半導体工場では、建物や製造装置に巨額の初期投資が必要です。
さらに量産開始後も、製造プロセスの改善、装置の保守、部品交換、次世代設備への更新など、継続的な支出が発生します。
自社向けの半導体を製造する場合、事業採算を判断するためには、外部から半導体を購入し続ける場合と、自社製造する場合の総コストを比較する必要があります。
自社製造の単価が外部調達より高ければ、それでも内製する経営上の理由が必要です。
例えば、外部調達だけでは必要数量を確保できない、供給が遅れることによって自動車やロボットの生産計画に影響が生じる、独自の半導体を短期間で改良することに競争上の価値がある、といった理由です。
ただし、その効果が1,000億ドルを超える投資を正当化できるかどうかは、将来の製造数量、歩留まり、設備稼働率、製品性能、外部調達価格などによって変わります。
特に重要なのは、Terafabが本格稼働するまでの資金負担です。
工場を建設している間は、巨額の資金が先に必要になります。一方、内製化によるコスト削減や供給確保の効果が具体化するのは、量産が進んだ後になります。
したがって、Terafabの財務的な実現性は、TeslaとSpaceXが、ほかの事業への投資を進めながら、半導体工場の建設と量産立ち上げに必要な資金を確保できるかどうかに左右されます。
参考:Tesla・2026年第3四半期決算説明会トランスクリプト
9.日本企業が注目すべきなのは、Terafabの完成だけではない
日本の半導体関連企業にとって、Terafabは巨大な潜在需要を持つ新規案件として注目に値します。
ただし、実際の受注につながるかどうかを判断するには、今後の進捗を具体的に追う必要があります。
重要なのは、少なくとも次の五つの確認事項です。
第一は、研究用工場の立ち上がりです。
2027年5〜6月の試作チップの動作確認が実現するかどうかは、Terafabの製造技術開発が進んでいることを示す最初の重要な材料になります。
第二は、主力工場の建設と装置発注です。
研究用工場と主力工場では、必要な装置の数量も投資額も異なります。主力工場の建設進捗に加えて、どの製造装置メーカーが、どの工程に関わるかが重要になります。
第三は、製造プロセスの具体化です。
どの世代のロジック半導体を製造するのか、どのようなメモリー技術を採用するのか、どの先端パッケージング方式を使用するのかによって、必要になる装置や材料が変わります。
第四は、量産歩留まりです。
試作成功と量産成功は異なります。特に最先端半導体では、歩留まりを高め、安定的に製造する能力が、コストと供給量を左右します。
第五は、投資資金の確保です。
長期的に1,000億ドルを超える可能性がある投資を、TeslaとSpaceXがどのように分担し、どの時期に実行するかが重要です。
この五つの進捗を追えば、Terafabが構想から実際の半導体製造事業へ移行しているかを、比較的具体的に判断できます。
日本企業の商機という観点では、東京エレクトロンに加えて、半導体洗浄装置、検査・計測装置、試験装置、精密部材、特殊材料などを供給する企業にも注目する価値があります。
例えば、SCREENホールディングスが手がける洗浄装置、アドバンテストが手がける半導体試験装置などは、新しい半導体量産工場に一般的に必要とされる技術領域です。
ただし、これらの企業についても、Terafabへの採用や受注が確認されたわけではありません。
今後、具体的な製造プロセスや装置調達計画が明らかになった段階で、商機をより詳しく評価できるようになります。
10.Terafabが示すのは、AI企業が半導体製造能力まで確保しようとする動き
Terafabの最大の特徴は、TeslaとSpaceXが半導体工場の建設そのものを、自社のAI事業の成長戦略に位置付けていることです。
Teslaにとっては、自動運転車やOptimusの生産と、搭載するAI半導体の供給を結び付ける構想です。
SpaceXにとっては、宇宙AI計算インフラを拡大するうえで、必要な計算能力を確保する構想です。
そして両社にとって、Terafabは外部サプライヤーに依存する半導体調達の一部を、自社の管理下に置こうとする試みです。
その目的は理解できます。
ただし、半導体産業では、最先端の技術を開発することと、それを大量かつ安定的に製造することの間に、大きな隔たりがあります。
Terafabが2028年後半にどこまで量産を実現できるかは、現時点では不確実です。
それでも、今回の発表によって明らかになったことがあります。
TeslaとSpaceXは、半導体の供給能力を、外部から購入するだけのものではなく、自社で確保すべき重要な経営資源と捉えています。
これまでAI企業の競争力は、AIモデルの性能やソフトウェアの能力を中心に語られることが多くありました。
しかし、AIを自動車、ロボット、データセンター、さらには宇宙空間へ広げる場合、その計算を実行するための半導体と、それを大量に生産する能力も重要になります。
Terafabは、AI産業の競争が半導体の設計・調達から、製造能力の確保へと広がっていることを示す事例です。
同時に、この構想を実現するためには、ASMLやIntel、そして日本の半導体製造装置・材料メーカーを含む、既存の半導体産業の高度な技術と供給網が必要になります。
マスク氏が目指す垂直統合は、半導体産業の分業を不要にするものではありません。むしろ、その高度な分業の成果を利用しながら、自社がどこまで製造工程を掌握できるかという挑戦です。
2027年の試作チップ、2028年の量産開始、そしてその後の歩留まりと製造コストが、この構想の実現性を判断する材料になります。
Terafabが予定どおり進むかどうかにかかわらず、AI企業が自社の半導体供給を確保するため、巨額の製造投資を検討する時代に入ったことは、半導体関連産業にとって注目すべき変化です。
主な参照資料
- SpaceX・2026年第3四半期決算説明会(2026年10月20日)
- Tesla・2026年第3四半期決算説明会(2026年10月21日)
- SpaceX・株式募集目論見書(2026年6月5日)
- Terafab公式サイト
- Reuters・Terafabの2028年量産目標(2026年10月20日)
- Tom’s Hardware・ASMLとTerafabの製造装置調達(2026年10月21日)
- Intel・2026年第1四半期決算説明資料
- ASML・EUV露光装置の技術解説
- 東京エレクトロン・半導体製造装置の製品一覧
- 東京エレクトロン・半導体製造工程への技術提案
2026年10月28日時点の公開情報に基づきます。企業が示した目標・計画、報道で確認された内容、将来の事業可能性に関する分析を区別して記載しています。

