次世代AIデータセンターの通信帯域拡大において、最命題とされてきた「完全なCo-Packaged Optics(CPO)」の本格量産期が2028〜2029年へと後退する見通しが広がっています。こうした状況下で、製造歩留まりと保守性を両立する現実的な中間解として一気に脚光を浴びているのが「Near-Packaged Optics(NPO)」です。
最近でも、Broadcomによる3.2T VCSEL NPOの発表や業界団体「Open CPX MSA」の設立、さらにはAlibabaによる3.2T NPOのパイロット運用開始など、NPO実用化に向けた動きが相次いで表面化しています。
Broadcom Showcases Industry-Leading Solutions for Scaling AI Infrastructure at OFC 2026
主戦場は「高出力InPレーザー」の安定供給へ
この技術シフトに伴い、光電融合領域の勝負どころは単なる「光エンジンの実装デモ」から「高出力リン化インジウム(InP)レーザー光源の供給能力確保」へと移っています。
LumentumやSivers/SemiNexといった米欧勢がCPO向け超高出力InPレーザーの増産投資を急ぐ一方、日本市場でも古河電気工業がAIデータセンター需要の急増を受けて業績予想を上方修正しました。同社が進めるDFBレーザーチップ、光増幅器(SOA)、MTフェルールなどの増産は、光接続の需要が実体経済として確実に立ち上がっていることを物語っています。
なぜ今、NPOが不可欠なのか?
従来の800G/1.6T可挿抜型光トランシーバー(QSFP-DD等)では、スイッチASICと前面パネルをつなぐ15〜30cmの銅配線で生じる信号減衰を補正するため、DSP(デジタル信号処理)がモジュール消費電力(14〜17W)の約半分を浪費していました。
スイッチ基板のすぐ近くに光エンジンを配置するNPOは、銅配線距離を数mm〜数cm程度に極小化することでDSPへの依存を大幅に削ぎ落とし、光学系全体の消費電力を60%以上削減します。
| 技術方式 | 従来型光トランシーバー | Near-Packaged Optics(NPO) | Co-Packaged Optics(CPO) |
| 実装構造 | スイッチ前面パネルに挿入 | 光エンジンをASIC近傍の基板上に実装 | 光エンジンとASICを同一パッケージ統合 |
| 銅配線距離 | 15 cm 〜 30 cm | 数 mm 〜 数 cm 程度 | 1 mm 未満(実質排除) |
| 電力削減効果 | 基準(削減なし) | 約 40% 〜 50% 削減 | 約 65% 〜 70% 削減 |
| 主普及時期 | 既存主流 | 2026年 〜 2028年(過渡期の主役) | 2028年 〜 2030年(完全量産) |
| 供給網の課題 | 組み立て精度 | 高出力外付け光源(ELS)、InPレーザー | 2.5D/3D高密度実装技術 |
日本企業に巡ってきた構造的チャンス
完全CPOへと至る架け橋としてNPOの標準化が進む2026〜2028年の設備投資サイクルにおいて、InPチップや高精度光フェルールなどの超精密部材を押さえる日本企業には、極めて大きな構造的優位が発生しています。
AIインフラの競争軸が「半導体そのもの」から「基板間の省電力な通信網」へと拡張する中、この過渡期を支えるNPO技術と精密部材サプライチェーンの動向から目が離せません。


