キオクシア2026年4〜6月期決算徹底分析。NAND専業の強味、高単価製品シフトで増収!AIスーパーサイクルに乗る

EXECUTIVE
8/19 (水) 10:00-
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【防衛費拡大局面で問われる技術獲得戦略】

ウクライナ「AI戦争OS」の実像と日本企業の防衛テックM&A戦略
〜自律航法・電子戦・迎撃ドローンから読み解く出資・買収・提携候補20社〜

【単なる戦況分析ではなく、現代戦の本質と事業機会を捉える】

現代戦の中核は「機体」から「AI戦争OS」へと完全移行しました。パランティアの作戦管制AI「PRISMA」やアンドゥリル「Lattice AI」の実像を読み解くとともに、日本企業が注目すべきウクライナの技術的優良企業をカテゴリー別に整理。出資・買収・JV・技術提携の現実的なロードマップを提示します。

■ 主要プログラムと実務ポイント:
  • 第1部:ドローン戦争の主役は「AI戦争OS」である(AI、衛星画像、C2、エッジコンピューティングの統合)
  • 第2部:作戦管制AI「PRISMA」の数学モデル(敵防空網を避ける数千本の自律飛行ルートを秒単位でシミュレーション)
  • 第3部:GPSを失っても飛ぶ自律航法(Visual Navigation、地形照合、週単位で更新されるソフトウェア定義型兵器)
  • 第4部:混成スウォームと防空コスト革命(デコイドローンによる飽和攻撃、1,000ドル台のAI誘導迎撃ドローン)
  • 第5部:ウクライナ防衛テック企業・買収候補(固定翼ISR、自律航法、電子戦、UGVなど優秀な20社と提携スキームの使い分け)

【対象】重工、電機、通信、半導体、クラウド、サイバー、ドローン、ロボティクス関連の経営企画・新規事業・技術者、VC・CVC・金融機関・商社の方


講師:今泉 大輔(株式会社インフラコモンズ 代表 / AI×経営ストラテジスト)

主催:SSK 新社会システム総合研究所

【免責事項】 本レポートは、特定の株式・金融商品の売買や投資を推奨するものではありません。掲載された情報は信頼に足ると判断したデータに基づき作成されていますが、その正確性や完全性を保証するものではなく、将来の投資成果を約束するものでもありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行われますようお願いいたします。

エグゼクティブ・サマリー

キオクシアが発表した2026年4〜6月期(2027年3月期 第1四半期)決算は、売上高1兆7,671億円(前年同期比 +415.5%、前四半期比 +76.2%)、非GAAP営業利益1兆3,262億円(営業利益率 約75.0%)という半導体産業の歴史においても希有な高収益性を記録した。この業績の背景には、単なる半導体需給サイクルの上昇にとどまらず、生成AIインフラにおける記憶階層の構造変化が深く寄与している。

売上高の66.5%を占める1兆1,747億円まで急拡大したエンタープライズ/データセンター向けSSD(eSSD)事業を主軸に、P/L構造の要点、技術ポートフォリオにおける競合対峙、ウエスタンデジタル(WD)との合弁(JV)運用がもたらす財務レバレッジ、ならびに業績の持続性とダウンサイドリスクについて定量的・定性的な解剖を行う。

主要財務指標2026年4〜6月期実績前四半期比(QoQ)前年同期比(YoY)構造的要因および主要トピックス
売上高1兆7,671億円+76.2%+415.5%eSSD売上構成比が66.5%へ跳躍し高単価ミックスへ転換
非GAAP営業利益1兆3,262億円営業利益率75.0%に達し、異次元の限界利益率を記録
eSSD / DC向け売上1兆1,747億円生成AI推論インフラ(KVキャッシュ特需)が牽引
ブレンドASP+70.0%超高密度・高ススループット製品偏重に伴う単価急騰
推定ビット出荷成長率+3.6%価格効果(ASP)が増収分の90%以上を占める増収構造
現金同等物7,910億円劇的なFCF創出により純現金(ネットキャッシュ)転換
株主還元・資本政策自社株買い(上限8,000億円)、1:3株式分割堅牢化されたB/Sを背景とする積極的な資本効率化

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軸1:【P/L構造の分解】ASP急騰 vs ビット成長(Bit Growth)

価格効果(ASP)対数量効果(ビット成長)の定量的分解

当四半期の売上高成長(前四半期比 +76.2%)および営業利益率約75%という極めて高い収益性の構造を解剖すると、成長の主因が「数量効果(ビット出荷増)」ではなく、「価格効果(ASP上昇)」と「高付加価値eSSDへの製品ミックスの転換」に依存していることが明確となる。

前四半期比の売上高成長率(+76.2%)とブレンドASP上昇率(+70.0%)の関係から、当四半期の推定ビット出荷成長率は以下のように試算される。

この計算結果は、増収効果のうち実に90%以上が価格の上昇および高単価製品へのシフトによってもたらされ、数量(出荷容量)の伸びは僅か+3.6%程度にとどまったことを示している。数量の量的拡大に頼らずに売上高を急伸させたことで、限界利益率は90%近くに達し、固定費負担を劇的に軽減させるP/L構造が実現した。

生成AI推論インフラにおけるKVキャッシュ構造転換とeSSD特需

データセンター向け売上高が1兆1,747億円(全社構成比66.5%)へ躍進した背景には、生成AIのアーキテクチャ変化に伴うアクティブ・ストレージの要求スペック急変が存在する。大言語モデル(LLM)のコンテキストウィンドウの拡大(128k〜1000k+ トークン)やマルチターン対話、自律型AIエージェントの普及に伴い、推論実行時における「キー・バリュー(KV)キャッシュ」のデータサイズが線形かつ爆発的に増加している1

128kトークンを超える長文コンテキスト処理においては、ユーザー1セッションあたり数GBから数十GB規模のKVキャッシュ領域が必要となり4、容量に制約のあるGPU内蔵HBMやホストDRAMのみで管理することはコスト面および物理的密度の観点から限界を迎えている1。これにより、KVキャッシュをGPUメモリから外部のNVMe SSDへとアクティブに退避・ロードする「KV-cache offloading」技術が業界の標準構成として定着した2

NVIDIAのInference Context Memory Storage Platform(ICMS/CMX)をはじめとする最先端AIインフラ体系では、GPU/DRAM層とコールドストレージ層の中間に位置する「G3.5」と呼ばれるイーサネット直結型ポッドレベルFlash記憶階層が新設された6。これにより、SSDは従来の「静的なデータ保管庫」から「推論アクセラレータの動作を止めないための高速な作業メモリ拡張階層」へと定性的な転換を果たした2

キオクシアが展開するPCIe 5.0対応高密度eSSD(CD9P / CM9シリーズ)は、GPUへのデータ転送を遅延させない高い読み出しスススループットとランダムアクセス性能を備えており7、このAI推論メモリ階層の急拡大と単価急騰の恩恵をダイレクトに享受する結果となった。

BiCS8・CBA構造の歩留まり向上と製造コスト革新

価格効果に加えて限界利益率を極大化させた重要な内部要因が、第8世代3Dフラッシュメモリ(BiCS8:218層)および「CBA(CMOS directly Bonded to Array)」アーキテクチャの量産化による歩留まり向上である10

CBAアーキテクチャは、周辺回路を形成したCMOSウェハと、記憶セルアレイを形成したウェハを別個の最先端プロセスで製造した後に高精度で直接貼り合わせる接合技術である10。従来のCUA(CMOS Under Array)構造に比べ、以下の優位性によりビット単価(Cost per GB)を引き下げた。

  • ウエハあたりの取得ダイ数(Die Per Wafer)の増大: CMOS回路の熱制約からセルアレイの最適化が解放されたことで、ダイサイズが縮小し、シリコンウエハ1枚から採れる有効チップ数が大幅に増加した10
  • I/O速度の高速化と歩留まり早期安定: 周辺回路に専任の微細プロセスを採用可能となったことで、NAND I/O速度は最大3.6〜4.8 Gbpsに達し、PCIe 5.0対応SSDの制御を極めて高効率化した7
  • 歩留まり改善に伴う単位コストの急速な落勢: BiCS8の立ち上げ初期における歩留まりが急ピッチで改善した結果、ビットあたりの製造コストが急減し、限界利益率の底上げに寄与した。

軸2:【競合力学と製品ポートフォリオ】Solidigm・Samsung・Micronとの直接対峙

AIサーバー向けNAND/eSSD市場における主要4陣営の競争環境は、高密度化アプローチ、製造コスト構造、およびメモリ事業全体のポートフォリオ戦略の違いによって二極化が進行している。

比較項目キオクシア / ウエスタンデジタルSolidigm(SKハイニックス傘下)サムスン電子(Samsung)マイクロン(Micron)
主力高密度ノードBiCS8 (218層) CBA構造11192層 / 232層 QLCV8 (236層) / V9 (290層)232層 G8 NAND
超大容量eSSD展開61.44TB (CD9P / CM9)761.44TB / 122.8TB (D5-P5336)61.44TB (BM1733a)30.72TB / 61.44TB
技術的強み・特徴高ランダム性能, 低消費電力, CBA構造7高容量密度(フローティングゲートQLC)垂直統合生産, 自社コントローラ高密度 packaging, 超高速I/O
事業構造(Pure Play性)NAND / SSD 専業SKグループ内(DRAM/HBM複合)総合半導体(DRAM/HBM/Foundry)DRAM / HBM / NAND 複合
CAPEXの優先傾斜100% NAND / SSD領域投資HBM / DRAMへの投資優先傾向HBM / DRAM / 先端ロジックに分散HBM / DRAMへCAPEX最優先割当

超大容量QLC eSSD市場における主導権争い

超大容量eSSD領域(61.44TBおよび122.8TB級)においては、SKハイニックス傘下のSolidigmがフローティングゲート技術をベースとしたQLC eSSD(D5-P5336等)を早期に投入し、大容量アーカイブおよびデータレイク市場で先増シェアを獲得してきた12

これに対し、キオクシア・ウエスタンデジタル陣営はBiCS8技術を基盤とするPCIe 5.0 eSSD(CD9P / CM9シリーズ)で対抗している7。キオクシアは単なる容量密度追増に走るのではなく、チャネリング構造とCBA技術による高いランダムアクセス性能(ランダムリード2,600 KIOPS)と低消費電力性能(Perf-per-Wattで前世代比最大2倍の改善)を前面に打ち出している7

Solidigmがアクセス頻度の低いコールド〜ウォーム領域に強みを持つのに対し、キオクシアの製品群はGPUと直接データをやり取りするAI推論・KVキャッシュ(G3.5層)という、より性能感度の高く単価の残るホット〜ミドル層を狙い撃ちすることで、高い採算性を確保している6

DRAM(HBM)を持たない「Pure Play」構造の強みと弱み

サムスン電子、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジーの3社は、HBM3e/HBM4の急速な需要増加とDRAM微細化ノード(1b/1c nm)への移行に対応するため、設備投資(CAPEX)およびR&Dリソースの大部分をDRAM部門へ最優先で傾斜させている。この状況は、NAND専業(Pure Play)であるキオクシアに対して非対称的な影響をもたらしている。

1. 構造的強み(アドバンテージ)

競合他社がクリーンルーム容量や先端露光装置の割当においてNAND部門を後回しにする中、キオクシアは自社のCAPEXおよびR&D投資の100%をNANDフラッシュおよびeSSD開発に集中投下できる。データセンター顧客からの急烈なeSSD増産要請に対し、確実なキャパシティ割当を行えるポジションを確立しており、急激な供給不足局面において価格交涉力を優位に運ぶ要因となった。

2. 構造的弱み(リスク)

一方で、サムスンやSKハイニックスはHBM/DRAMとeSSDを単一のインフラパッケージとして大手メガクラウド事業者へ統合提案・クロスセルを行う「ソリューション・バンドリング戦略」を展開できる。キオクシアは製品単体のスペックとTCO(総所有コスト)の優位性のみで勝負せざるを得ない。また、将来的にNAND市場がシクリカルな下降局面を迎えた際、高利益なDRAM/HBM部門のキャッシュフローでNAND部門の下振れを相殺するという統合型ポートフォリオ・バッファーを持たない財務的リスクを抱えている。

軸3:ウエスタンデジタル(WD)アライアンスと生産・CAPEX構造

Flash Ventures JVモデルの財務レバレッジとキャッシュフロー影響

キオクシアとウエスタンデジタル(WD)は、四日市工場および北上工場において、生産合弁会社「Flash Ventures」(キオクシア50.1%、WD 49.9%出資)を通じた製造アライアンスを運営している13。このJV構造は、今回の需要拡大期において高い財務レバレッジとして機能した。

Flash Venturesの枠組みでは、建屋(クリーンルーム)および基礎インフラはキオクシアが単独で所有・建設し、ウェハ製造装置(WFE)およびR&D投資はJVを通じて両社が資本および貸付・保証を分担する14。完成したウェハは、両社が製造原価に一定のマークアップを加えた価格で引き取る契約となっている14

需要急増期において、このモデルは以下の財務的成果をもたらした。

  • CAPEX効率の倍増: 最先端ノード(BiCS8等)導入に必要な莫大な設備投資額をWDと折半することで、1社あたりの投資負担が半減し、全社FCFの創出スピードが急上昇した14
  • 公的補助金の獲得による資本コスト低下: 経済産業省(NEDO)等から四日市・北上工場向けに累積で最大1,500億円規模等の立地補助金採択を受けたことで、実質的な減価償却費およびWACC(加重平均資本コスト)が抑制された16

この結果、営業活動キャッシュフローが飛躍的に増大し、有利子負債の返済と現金の蓄積が進んだことで、B/S上での純現金(ネットキャッシュ)ポジション転換(現金同等物 7,910億円)を達成した。これが上限8,000億円の自社株買いや株式分割といった株主還元政策の原資となっている。

WFE再拡大による固定費重圧と将来の損益分岐点(BEP)上昇リスク

好決算を受け、キオクシアは北上工場第2クリーンルーム(K2)の稼働前倒しおよびBiCS8/BiCS9に向けた設備投資(WFE)の再拡大へと舵を切っている。しかし、この投資増額は将来のNAND市況鈍化時において「損益分岐点(BEP)の上昇」という反作用を及ぼす。

JVアライアンスの運用規約構造上、市場が供給過剰に傾斜した際、パートナーであるウエスタンデジタルは自社の販売計画に応じてJVからのウェハ引き取り比率を49.9%の上限から下方に減縮させる権利を有する19

過去の下降サイクルで顕在化したように、WDが引き取り量を抑えた場合、ファブ全体の固定費(装置減価償却費やクリーンルーム維持費)の負担がキオクシア側に不均衡にのしかかる構造が存在する19。稼働率を下げても固定費が縮小しないため、ウェハ1枚あたりの製造単価が急上昇し、キオクシアの損益分岐点を急速に押し上げるリスクを内包している19。今後のWFE投資の急拡大は、業績拡大期には利益率を増幅させるものの、ダウンサイクルにおいては固定費の重圧として跳ね返る諸刃の剣である。

軸4:業績の持続性と市場の「ピークアウト懸念」の検証

次四半期の見通しとして示された営業利益1.9兆円規模という数字に対し、市場では「一時的な需要の先食いによるバブル」か「AIインフラの構造的成長」か議論が定まっていない。

「AIシクリカル」対「AI構造変化」の定性・定量分析

現在の極めて高い利益率が構造的成長によるものか、一時的な急騰かを解明するため、要因を2つの側面から分析する。

1. 一時的スパイク要因(AIシクリカル / 在庫積み増し)

ハイパースケーラーやAIサーバーメーカーは、サプライチェーンの供給制約やNAND価格の上昇局面において、必要実需以上の安全在庫を前倒しで確保する傾向(重複注文:Double Booking)を強めている。この投機的・先行的な在庫構築は、顧客側の在庫積み増しが一巡した段階で急烈な受注キャンセルや単価下落(調整局面)を引き起こす潜在リスクとなる。

2. 不可逆的な需要要因(AI構造変化)

一方で、生成AIの推論処理においてKVキャッシュ領域をSSDへ常駐させるアーキテクチャの標準化や、モデルのマルチモーダル化(画像・動画・音声の統合処理)は、AIモデルの進化に伴う不可逆的な構造変化である2AIサーバー1台あたりのNAND搭載容量(Attach Rate)および要求スループットは従来の汎用サーバーから不連続に跳ね上がっており4、これは一時的な景気循環ではなくインフラの構造的変化といえる。

結論として、現在の超高利益率のうち推定60〜70%はKVキャッシュ等による構造的な需要拡大に支えられているものの、残りの30〜40%には需要過熱に伴う先取り注文やASPの過度な上昇による一時的インフレ効果が含まれていると見るのが妥当である。

ダウンサイドリスクのトリガー分析

2027年以降の需給バランスを悪化させるリスク要因として、以下の2つのトリガーに注視が必要である。

1. スマートデバイス(スマホ・PC)向け需要の回復遅延

eSSD市場が活況を呈する一方で、スマートフォンや一般クライアントPC向けのNAND需要は低調な推移を続けている。キオクシアはBiCS8 QLCを採用したクライアント向けSSD(EG7シリーズ等)の投入によりTCO改善を訴求しているが20、民生品市場全体のビット成長が滞留した場合、競合他社が余剰となった汎用NANDキャパシティをeSSD向けへ転換し、eSSDの供給不足が急速に解消に向かうリスクがある。

2. 中国競合(YMTC等)の技術追随とキャパシティ増大

長江存儲科技(YMTC)は、米国の技術輸出規制下でありながら製造装置の国産化を進め、294層クラスの「Xtacking」構造3D NANDの生産増強と、月産15万枚規模へのキャパシティ拡張を推進している21

米国のエンティティ・リスト指定により、YMTCが米国大手ハイパースケーラーの主力を代替する可能性は極めて低いが22中国国内市場や新興国市場におけるクライアント向けおよび汎用ストレージを低価格で制圧することにより、キオクシアを含む主要ベンダーの汎用プロダクト価格体系に下押し圧力をかけるシナリオが懸念される21

シナリオ発生確率主な想定前提条件業績および市場への影響
メインシナリオ(ベース)60%AI推論需要の継続的拡大、民生品市場の緩やかな回復、BiCS8移行順調ASPは緩やかに落ち着くが、営業利益率45〜55%の高水準を維持
強気シナリオ(Bull)25%KVキャッシュ需要の爆発的増加、高密度eSSDの深刻な供給不足持続2027年後半まで高ASP維持、次四半期以降も営業利益1.9兆円規模が定着
弱気シナリオ(Bear)15%AIサーバー在庫調整の突入、民生品不振、YMTC増産による汎用価格崩壊212027年にASP急降下、固定費重圧により営業利益率が20%以下へ急縮小

投資判断および経営陣への戦略的示唆

機関投資家・個人投資家への視点(Valuation & Catalysts)

株式市場におけるキオクシアの企業価値評価(Valuation)は、従来の「ボラティリティの大きい単なるメモリ・シクリカル銘柄」から「AI推論インフラを支える必須のプラットフォーム企業」へと評価軸を移行(リレーティング)させる局面に至っている。

ただし、足元の営業利益率75.0%は価格高騰がもたらした短期的なピーク水準であることを認識し、ミッドサイクル(巡航状態)における営業利益率を40〜50%程度に置いたDCFモデルおよびマルチプル評価を行うことが妥当である。

今後注視すべき主要カタリストは以下の3点である。

  1. 大手ハイパースケーラー向けBiCS8/CBA eSSD(CD9Pシリーズ等)の認証(Qualification)進捗およびシェア拡大速度
    7
  2. 上限8,000億円の自社株買いの執行ペースとB/Sにおける資本効率の改善度
  3. 次四半期以降の増収要因が「価格効果(ASP)」から「数量効果(ビット成長)」へ円滑に移行できるか否か

経営陣への事業戦略上の示唆

1. NAND Pure Playの強みを研ぎ澄ます「AIエコシステムとの深耕」

DRAMを持たない構造的弱みをカバーするため、単なる汎用SSDの供給にとどまらず、NVIDIAのICMSをはじめとするAI推論アーキテクチャや標準化ソフトウェア層(vLLM、LMCache等)との親和性を高めた専用ファームウェア・コントローラ技術の垂直統合を加速させるべきである2

2. WFE投資における「ノード移行優先」の資本規律

需要好調に伴う資本余力を無秩序なウェハ投入枚数(クリーンルーム拡張)の増大に割り振るのではなく、BiCS8および次世代BiCS9への技術ノード移行(密度向上によるコストダウン)に重点投資し、将来の市況下落時にも耐えうる低損益分岐点(BEP)構造を維持する財務規律が不可欠である10

3. 市況ダウンサイクルを見据えたJV契約のリスクヘッジ

不況期においてウエスタンデジタルとの引き取り容量減少がキオクシア側の固定費重圧に直結する過去の課題を踏まえ、JV内における設備稼働維持コストの分担スキームや引き取りルールの最適化・柔軟化を進めることが、長期的な企業価値の安定に直結する19

引用文献

  1. KV Cache Offloading for Context-Intensive Tasks – arXiv, https://arxiv.org/html/2604.08426v1
  2. Stop Calling It KV Cache: It’s Something Much Bigger – LMCache Blog, https://blog.lmcache.ai/en/2026/04/28/stop-calling-it-kv-cache-its-something-much-bigger/
  3. Context Without Limits: A High-Performance KV Cache Platform for Large-Scale AI Inference, https://www.redbooks.ibm.com/docs/MD260021/MD260021.html
  4. Really Big Data: How Context Memory Is Reshaping AI Infrastructure, https://www.vastdata.com/blog/kvcache-context-memory-storage
  5. Accelerate Large-Scale LLM Inference and KV Cache Offload with CPU-GPU Memory Sharing | NVIDIA Technical Blog, https://developer.nvidia.com/blog/accelerate-large-scale-llm-inference-and-kv-cache-offload-with-cpu-gpu-memory-sharing/
  6. Inference Context Memory Storage (ICMS): Why AI inference is becoming a problem only flash can solve – Solidigm, https://www.solidigm.com/products/technology/icmsp-ai-inference-is-flash-storage-problem.html
  7. KIOXIA broadens 8 th generation BiCS FLASH™ SSD portfolio with high-performance data center NVMe SSDs to maximize GPU utilization in AI and HPC workloads, https://europe.kioxia.com/en-europe/business/news/2025/20250620-1.html
  8. KIOXIA announces first enterprise NVMe SSD built with 8 th generation BiCS FLASH™ TLC-based flash memory technology, https://europe.kioxia.com/en-europe/business/news/2025/20250515-1.html
  9. Kioxia Broadens 8th Generation BiCS FLASH™ SSD Portfolio with High-Performance Data Center NVMe™ SSDs to Maximize GPU Utilization in AI and HPC (High-performance computing) Workloads, https://www.kioxia.com/en-jp/business/news/2025/20250620-1.html
  10. KIOXIA BiCS FLASH Infographic, https://www.kioxia.com/content/dam/kioxia/shared/business/memory/bics/asset/KIOXIA_BiCS_FLASH_Infographic.pdf
  11. KIOXIA BiCS FLASH Generation 8 Infographic, https://americas.kioxia.com/content/dam/kioxia/en-us/business/memory/bics/asset/KIOXIA_BiCS_FLASH8_Infographic.pdf
  12. Enterprise SSD Global Market Size, Competitors & Forecast, https://www.researchandmarkets.com/report/enterprise-ssd-market
  13. Kioxia and Western Digital Jointly Invest in New Flash Memory Manufacturing Facility in Yokkaichi Plant, https://www.kioxia.com/en-jp/about/news/2022/20220415-1.html
  14. Western Digital Fourth Quarter and Fiscal Year 2023 Earnings Presentation – WDC Investor Relations, https://investor.wdc.com/static-files/98ffd9ca-25c1-4e99-bd80-7048708e5762
  15. wdc-20220701 – SEC.gov, https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/106040/000010604022000055/wdc-20220701.htm
  16. Kioxia and Western Digital’s Joint Venture To Receive Up To 150 Billion Yen Government Subsidy for Yokkaichi and Kitakami Plants, https://www.kioxia.com/en-jp/about/news/2024/20240206-1.html
  17. Kioxia and Western Digital’s Joint Venture To Receive Up To 92.9 Billion Yen Government Subsidy for Yokkaichi Fab 7, https://www.kioxia.com/en-jp/about/news/2022/20220726-1.html
  18. Kioxia and Western Digital’s Joint Venture To Receive Up To 150 Billion Yen Government Subsidy for Yokkaichi and Kitakami Plants | WD, https://www.westerndigital.com/company/newsroom/press-releases/2024/2024-02-06-kioxia-and-western-digitals-joint-venture-to-receive-up-to-150-billion-yen-government-subsidy
  19. Would WDC Really Merge with Kioxia? – The SSD Guy, https://thessdguy.com/would-wdc-really-merge-with-kioxia/
  20. Kioxia Unveils Value-Oriented QLC-based KIOXIA EG7 Series SSDs for PC OEMs, https://www.kioxia.com/en-jp/business/news/2026/20260421-1.html
  21. YMTC NAND Ambition – Brics bridge, https://bricsbridge.com/news/ymtc-nand-ambition/
  22. US sanctions push YMTC’s NAND share below 5% in 2Q25 – digitimes, https://www.digitimes.com/news/a20251001PD212/ymtc-nand-market-share-chipmakers-market.html

さっつーのよい知らせ:最新話

【さっつーのよい知らせ】第18話・働くパパ(アナログイラスト・漫画×癒し)

「パパも大変だったみたいだよ…」SNSに書かれた父の本音は…

【あらすじ】

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イラスト・原作:ソラガスキ

次世代半導体